1,000超の仮想通貨が消滅―将来の成功を握る鍵は何か
著:Gavin Brown (マンチェスター・メトロポリタン大学、Senior Lecturer, Finance)、Richard Whittle (マンチェスター・メトロポリタン大学、Research Fellow in Economics)
ここ数年、多くの仮想通貨が華々しくデビューした。しかし消費者、投資家から見放され、先細りとなって消えてしまった通貨もたくさんある。失敗事例を追跡調査しているコインオプシーによると、本記事執筆時点で1,085ほどの通貨が姿を消した。現在、約3,000の通貨が存在しているとはいえ、かなりの数が失われたことになる。業界関係者の間でも、多くの仮想通貨が失敗するとみている。
これほど多くの通貨がうまくいかなかったのはなぜだろうか?1990年代のITバブルのように、揺籃期の市場のため参入と退出が激しいと思われるのはもっともだ。だがそれと同時に、仮想通貨を開発した人々がビジネスのユースケースを設計するのに費やした時間があまりにも少なかったのも事実である。そのため、ローンチ後になって、自分たちのアイデアが古くなったのを知るのだった。
「Xコインは新型のビットコイン」などと銘打ち、成功しているコインを複製して通貨がローンチされるのを、私たちは何度も目にしてきた。しかし市場にはすでにビットコインがあり、堅調な需要を維持している。それは、わずか一ヶ月で1,800万ビットコインが採掘された事実をみればわかる(訳注:2019年10月時点)。私たちは開発者にまつわるこうした問題を見過ごす傾向がある一方、仮想通貨市場の急速な発展に追いつけない規制当局を非難してしまう。ところが、アメリカの証券取引委員会(SEC)によるハーウィーコインのような施策もある。これは新しいタイプのフェイクコインで、仮想通貨への投資にはリスクがあることを投資家が学べるよう設計されている。
これまでのような開発ミスが今後も発生することは間違いないだろう。以下、将来における仮想通貨の失敗に関連するとみられるいくつかの論点を示す。
◆大手金融機関の到来
11年前、サトシ・ナカモトという正体不明の人物がビットコインの概要を記した有名なホワイトペーパーを公表し、マネーの世界に静かな革命を起こした。このビジョンが提示された当初、アルトコインやトークンをローンチしたのは、少人数の開発者チームや風変わりな起業家であることが多かった。彼らには、伝統的な金融機関や中央銀行という世界を、統制者のいない分散型取引に屈服させるという明確なミッションがあった。
数年が経過すると、打倒銀行を掲げた企業の多くは、かつて挑戦を挑んだ大手金融機関に飲み込まれてしまった。ウォール街の大手金融機関は着実に仮想通貨と関わるようになり、デリバティブや先物商品と組み合わせて取引を専門集団の領域に引き上げていった。
もしかすると、いまや仮想通貨を設計して利益をあげられるのは大手金融機関しかいない段階に入っているのかもしれない。次なる革命を起こすホワイトペーパーを発表するのは、時価総額数十億ドルの世界的な企業になりそうだ。こうした状況は控えめに言っても、事態が急展開した象徴的な事例だろう。
つつましくビジネスを始めた他の多くの仮想通貨も失敗するだろう。それは単に、巨大な金融機関に立ち向かうだけの十分なリソースを有していないからである。マネーの未来を支配するという仮想通貨の夢と埋没費用の存在が彼らの原動力となるだろうが、多くの場合、それだけで十分とはいえない。
◆未来は安定している
仮想通貨が成功するのに必要な条件とは、人々が通貨を使いたいと思う理由と、通貨を信頼するに足る理由のあることだ。コインやトークンが信頼されているのは、概して、この業界が基盤としている暗号法を使った分散型台帳システム「ブロックチェーン」があるからである。
つまり、新たにローンチされたコインが生き残るか失敗するかを市場が判断する基準で重要なのはユースケースである。現在、ウェブ広告の資金を調達する新たな手段からゲーミングの世界での交換単位にいたるまで、あらゆるものを提供しているアルトコインがある。だがもっと一般的なことを言えば、ビットコインより優れたコインをローンチしたと言えないのなら、市場の関心はステーブルコインへと向かうだろう。
ステーブルコインとは、既存の法定通貨や希少な貴金属などの資産の価値に固定するか、その価値を担保にしてビットコインのような激しい価格変動を回避するよう設計された仮想通貨のことである。日常の売買で仮想通貨が使えるように設計されているほか、既存通貨の取引をしない多くの仮想通貨取引所に対して安定的な価値の貯蔵手段を提供している。
代表的なステーブルコインにはUSDコインやテザーなどがあり、いずれも1単位は1米ドルに等しい。ステーブルコインを運営していくには相当の金融リソースやインフラが必要であることを考えると、ここでも大手企業の参入が好まれるだろう。フェイスブックのステーブルコイン「リブラ」導入に向けた試みがその好例である。
◆不正による損失
仮想通貨の世界では、多くの投資家が詐欺の被害にあって資金を失った。最近の有名な事例に、ワンコインに関するねずみ講詐欺事件がある。このスキームは、ネバダ州に本拠を置く会社にビットコインか米ドルを投資すると300%の収益が保証されるという触れ込みだった。
資金は外国為替オプションとアルトコインに投じられるはずだったが、このスキームに参加していた別の投資家への配当に充てられていたという。フォーチュン誌の最近の報道によると、ワンコインで発生した損失は194億ドル超とされており、2008年に発生したバーナード・マドフによるねずみ講詐欺事件の被害額を上回った。
やや異なる事例にビットコネクトがある。投資家がビットコインをビットコネクトに交換する取引所で年最大120%の利益を得られるとうたわれていた。長らく詐欺の被害が報告されており、昨年にアメリカの当局が介入したところ取引所は突然閉鎖された。ビットコネクトコインの価格は96%暴落して大きな損失が発生した。ただ通貨自体は消滅しておらず、取引は現在もなされている。
さらにもう一つ、取引所を攻撃するハッカーの問題がある。最も有名な事例は2014年に起きたマウントゴックス事件で、当時85万ビットコインが何者かによって盗まれ、回収されることはなかった。さらに最近では世界最大の取引所の一つ、バイナンス取引所が複数回にわたってハッキングされ、投資家は数千万ドルの被害をこうむった。
そのほか、注目を集める事件を起こした人物に、カナダの仮想通貨取引所クアドリガCXを創設し、2018年に30歳で亡くなったジェラルド・コットンがいる。誰も彼のパスワードにアクセスすることができなかったため、11万5,000人の顧客の投資資金1億3,700万ドル相当を回収できなかった。
裁判所が指名した管財人がようやくアカウントにアクセスしたところ、彼が死去する数ケ月前にすべての資産が売却されていたことが判明した。
こうした問題は今後も引き続き発生することが予想されるが、それ自体は驚くことではない。概して規制が厳しくなく、人々の理解が浸透しておらず、世界中を容易に動き回れる匿名技術と、魅力的な王子様と出会えるならカエルにもキスしてしまう多数の投資家という有害な組み合わせには事欠かないからだ。
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Conyac
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