金融庁の法改正と投資型クラウドファンディング業界の展望とは

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ここ数年で大きな話題を集めている投資型クラウドファンディングは、未公開の株式やファンドに資金投資を行い、投資先が生んだ利益から金銭的リターンを得られる金融サービスとして少しずつ普及を始めています。投資型クラウドファンディングの業界発展に大きな貢献をしたのが、2015年5月29日に施行された金融庁による関連法改正でした。

投資型クラウドファンディングは投資をして金銭的リターンを受け取る金融商品の一つですが、細かい分類があったり様々な業者が乱立していたりと、投資に慣れないビギナーには難しいと感じられる部分も多いのではないでしょうか。この記事では、金融庁が行なった法改正の狙いと、改正を受けて投資型クラウドファンディング業界のその後の動向や事例を交え、解説していきます。

投資型クラウドファンディングと金融庁の規制緩和

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投資型クラウドファンディングは以下の3つの方式に分類されます。

ソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)

高金利でも資金調達を行いたい企業と高利回りで資産運用したい個人及び法人をマッチングさせるサービスです。基本的には、企業は銀行から融資を受けるのが従来の方法ですが、創業年数が短かったり少額資本だったりすると信頼性が乏しいとみなされ、銀行の審査基準に引っかかって融資を受けられないことがあります。

そのような企業に対して、ソーシャルレンディング事業会社が返済確実性をチェックし融資を行うのがソーシャルレンディングです。ソーシャルレンディング事業会社が投資から集めてまとまった投資金を、資金を必要とする企業に対して貸付けることで、貸付金利の一部を投資家に還元する手法になります。

ファンド(事業)投資型クラウドファンディング

ソーシャルレンディングが企業に対して投資する一方で、特定の事業プロジェクトに対して投資を行うのがファンド型クラウドファンディングです。プロジェクトの売上から金銭的リターンを受け取るモデルですが、中には金銭以外に商品や独自の特典などを受けとるプロジェクトもあり、復興支援や音楽フェスなどがそれにあたります。様々なプロジェクトが対象になり、広く人気のある投資型のサービスです。

株式投資型クラウドファンディング

金銭やサービスを受け取る方式と異なり、リターンとして未上場企業の株式を受け取れるサービスです。小さい会社ながら、事業構想が優れていたり技術力の高い企業など、今後大きな成長が期待できる企業を資金面から応援出来るメリットがあります。しかし未上場企業である為、自由に株式を売却することが出来ません。また、IPOやM&Aなどがされない限りその株には価値を生まないので、大きなリスクを伴うハイリスク・ハイリターンの投資方法になります。

3つの投資型について、それぞれの事業会社などをさらに詳しくご覧になりたい方は下記からご確認ください。

少額電子募集取扱業者の設置によるリスクマネーの供給促進

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さて、それでは件の法改正はどのような目的をもって推進されたのでしょうか。それは「リスクマネー」を理解することが良い助けとなるでしょう。リスクマネーとは、回収不能になるリスクがあるベンチャー企業などに出資される資金を指します。海外と比較して日本の問題点として挙げられるのは、ベンチャー企業の資金調達が容易に出来ないことがあります。逆説的には、日本の経済活動をより活発にするため、起業家が資金調達を容易になることが社会全体として求められています。

この資金調達を容易にする仕組みが投資型クラウドファンディングです。法改正は投資型クラウドファンディングに参入する企業が増えることを目的に実施されました。そして具体的な法改正の内容として、「第一種少額電子募集取扱業者」「第二種少額電子募集取扱業者」が新たに設けられました。

第一種少額電子募集取扱業者

株式型クラウドファンディング業者が非上場株式について少額要件を満たす電子募集取扱業務を行う際に、最低資本金として1,000万円が用意されていた場合、第一種少額電子募集取扱業者として登録が受けられるようになりました。変更があったのは最低資本金の部分で、これまでの第一種金融商品取引業者の最低資本金が5,000万円だったことから大幅に参入要件が緩和されたことがわかります。

また、第一種金融商品取引業者には、兼業規制がありました。兼業規制とは、金融商品取引法に記載されていない業務には金融当局への届け出・承認が必要となる規制です。しかし、新設された第一種少額電子募集取扱業者では兼業の届け出・承認が不要とされたため、他の事業からの参入ハードルも大きく下がりました。

第二種少額電子募集取扱業者

ファンド投資型クラウドファンディングにおいて、少額要件を満たす電子取扱業務は500万円の最低資本金を用意することで登録可能となりました。従来の第二種金融商品取引業者の最低資本額が1,000万円だったため、こちらも大幅な規制緩和となります。これらの法改正により、より多くの起業家に必要なリスクマネーが供給されることで、経済の促進することが狙いでした。

不動産特定共同事業法の改正による不動産投資の促進

投資型クラウドファンディングを用いた社会課題の解決は、現代日本の不動産問題まで射程が伸びました。日本の不動産は空き家問題や不動産ストック問題などを抱えており、それらの解決を担う地方企業の参入が必須でした。そんな中、規制緩和の対象になったのは「不動産特定共同事業法」で、不動産投資の促進を目的として法改正が実施されました。不動産特定共同事業法とは、複数の投資者からお金を集めた上で、不動産の売買などを行い、その際に発生した収益を投資した金額に応じて、金銭的リターンを分配する不動産事業のことを指します。

法改正の以前に不動産特定共同事業を行うには、「資本金1億円以上が必要」という高いハードルが課せられていたため、ベンチャー企業や地方企業には参入が難しい時期が続いていました。そのハードルを下げるために、今回新しく新設された「小規模不特定共同事業」によって、「資本金1,000万円以上が必要」という形までハードルが引き下げられました。

この施策により、不動産の小口化商品で出資者を集められる企業が増えました。こうしてベンチャー企業や地方企業が新規参入しやすくなり、日本の不動産が抱える問題を解決する投資が促進されるようになりました。

規制緩和がもたらした投資型クラウドファンディング業界の動向

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ここまでは投資型クラウドファンディングの概要と、具体的な法改正による規制緩和について説明しました。では実際に、法改正をきっかけに活性化した投資型クラウドファンディング業界はどういった動向を辿っているのでしょうか。

投資型クラウドファンディング市場規模の拡大

金融庁の法改正をきっかけに、投資型クラウドファンディングの市場は拡大を進めています。矢野経済研究所の調査によると、投資型クラウドファンディングの新規プロジェクト支援額は2017年度で前年比127.5%増の1700億円と推計されました。株式投資型クラウドファンディングが2017年5月から日本で本格的に始まったことが大きな要因ですが、さまざまな業界から投資型クラウドファンディングの新規参入が続いていることで、今後さらなる盛り上がりを見せると想定されます。

融資(貸付)型業者の相次ぐ不正と金融庁の行政処分

クラウドファンディング業界が盛り上がりを見せている反面、融資型業者の不正が相次いでおり、金融庁が行政処分に踏み切る事例も出てきています。2017年の新規プロジェクト支援額1700億円のうち、9割に登る約1534億円をソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)が占めています。しかし、インターネットの募集画面に投資者に対して誤解を与えかねない表示が散見されました。

その他にも「ウェブサイトに記載した事業自体が実在しない虚偽の表示」「担保設定をしていない場合でも、しっかり保全されているような誤解を与える表示」などの事例が発生しました。金融庁はこのような不正的行為を犯した事業者に行政処分を執行し、投資家に対しては注意を喚起する呼びかけを発表しました。投資家には情報開示の質や投資のリスク、事業者への信用性などを注意深く熟考する姿勢が求められています。

投資者を保護するための動き

投資者を保護する動きも活発になっています。投資家にとってソーシャルレンディングは投資金の貸付先が匿名で、不透明性が長年の懸念材料でした。しかし、2019年3月に金融庁は情報開示における解釈の変更に関する発表を行いました。投資家にとっては透明性が増し、金融庁及び投資家に対して真摯な事業者にとっては業界の健全な規模拡大に貢献する大きな変更と言えます。

投資型クラウドファンディング事業者の新規参入を活性化する法規制緩和の懸念点は、ネガティブな事案が増加することで投資商材としての信用性が低く感じられ、業界の全体的な投資金の総額が減ってしまうことです。投資金が減ってしまうと、新興企業や新規事業における資金調達の発展が妨げられてしまいます。

一連の関連法改正と保護の動きを通じて、投資型クラウドファンディングは事業者に対して参入しやすいものになり、投資家に対して健全性と透明性を向上させました。まだ始まったばかりの投資型クラウドファンディングは今後も規制の緩和と強化を繰り返しながら、社会的意義の高い投資商材として成長を続けていけるのか、引き続き注目を集め続けることでしょう。

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Text by NewSphere 編集部
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