個人がベンチャー企業に投資できる 株式投資型クラウドファンディングとは

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著:升井 亮

 新しい投資の選択肢である、「株式投資型クラウドファンディング」をご存知でしょうか?

 株式投資型クラウドファンディングは、個人投資家がインターネットを通じてベンチャー企業の株式を少額から購入できる仕組みです。ベンチャー企業1社あたりの調達金額は年間1億円未満、個人投資家の投資可能金額は1社につき年間50万円が上限金額となっています(金融商品取引法で、ベンチャー企業、個人投資家それぞれに上限金額が定められています)。

 これまでクラウドファンディングといえば、支援者がお金を寄付する「寄付型」や、支援者がお金を出資してモノやサービスをリターンとして受け取る「購入型」といった種類のクラウドファンディングが中心でした。その中で、株式投資型クラウドファンディングが生まれた背景、利用するメリット、今後の動向について、ご紹介したいと思います。

◆株式投資型クラウドファンディングの解禁
 2015年に金融商品取引法が改正されたことで、株式投資型クラウドファンディングが日本で解禁されました。解禁された背景としては、家計の金融資産をベンチャー企業への投資に振り向かせることでリスクマネーの供給を促進する目的があります。

 なぜ、リスクマネーの供給を促進する必要があるのでしょうか?

 それは日本のベンチャー投資環境に大きな課題があるからです。日本では、ベンチャー企業への投資金額は2013年には約830億円でしたが、2019年には約3,850億円と右肩上がりで推移しています。しかし、アメリカでは年間14兆円がベンチャー企業に投資されており、約36倍の差があります。

 そこで政策の最大の肝になってくるのが家計の金融資産です。日本銀行の調査によると、2019年9月末時点では、日本における家計の金融資産は1,864兆円となっており、預貯金の比率が5割を超えている一方で、株式・投資信託等有価証券の比率は1.5割程度となっています。海外の株式・投資信託等有価証券の比率を見ると、アメリカでは5割弱、欧州では3割弱となっていることから、日本は金融資産を有価証券市場経由で企業の活力につなげるという見方では、その力が極めて脆弱と言えます。

 この1,864兆円ある家計の金融資産の一部でもベンチャー企業への投資に振り向かせることで日本経済の活性化へ繋げる、その一翼を担っているのが株式投資型クラウドファンディングです。

◆株式投資型クラウドファンディングの特徴
 株式投資型クラウドファンディングの特徴は、大きく3つあります。

1. 新規株式公開(以下、IPO)や企業買収(以下、M&A)を目指すベンチャー企業に投資
 投資したベンチャー企業がIPOやM&Aすることで、個人投資家はリターンを得ることができます。ただし、それまでは株式の売買や譲渡は難しく、長期投資となる覚悟とそのような余裕資金が必要です。さらにベンチャー企業は上場企業等と比較して倒産する可能性が高いため、予めリスクがあることを認識する必要もあります。

2. 投資後は、事業進捗の確認や事業支援が可能
 株式投資型クラウドファンディングでは、ほとんどの企業が1ヶ月もしくは数ヶ月毎に事業進捗を個人投資家に報告します(※)。これによって投資後も継続的にベンチャー企業に関わることができ、さらにベンチャー企業に対して、マーケティング・営業先紹介・人材採用などの支援を行うことができ、自分の力で会社の成長に貢献することも可能です。

 ※株式投資型クラウドファンディング事業者は、定期的に適切な情報を提供することに関して、ベンチャー企業との間で契約の締結が義務付けられています。

3. エンジェル税制を利用できる
 エンジェル税制とは、ベンチャー企業への投資を促進するために、要件を満たすベンチャー企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度です。個人投資家は優遇措置A(株式投資額の所得控除による減税)または優遇措置B(株式投資額の株式譲渡益からの控除による減税)のどちらか一方を選択し、投資を行った年の翌年に確定申告することで税優遇を受けることができます。

 これら3つの特徴のために、株式投資型クラウドファンディングは個人投資家から注目を集め始めています。

◆株式投資型クラウドファンディングの今後の動向
 株式投資型クラウドファンディングは、2015年の金融商品取引法改正により解禁され、2017年に株式投資型クラウドファンディング事業者の登場により利用され始めました。そのため、個人投資家に利用され始めてまだ4年目の市場で、仕組み自体の認知は徐々に広がっている状態です。

 2020年は、より認知が広がり、市場が拡大する年になるのではないかと想定しています。その理由として、政府が掲げる「未来投資戦略2018」の中で記載されている「2023年までにユニコーンを20社創出」という目標を達成する上で、株式投資型クラウドファンディングが重要な役割を担っているからです。20社のユニコーンを創出するためには、ベンチャー投資環境を改善する必要があり、改善には家計の金融資産約1,800兆円が大きな鍵を握っています。そして、その家計の金融資産をベンチャー企業への投資に引き出すことができるのが、株式投資型クラウドファンディングです。

 そして株式投資型クラウドファンディングの利用を後押しするために、エンジェル税制の改正や株式投資型クラウドファンディングの1億円・50万円の上限金額規制の改正要求がされるなどの動きが見られます。これらの動向を踏まえると、株式投資型クラウドファンディング市場の成長ポテンシャルは十分大きいと考えられます。

 また、これまで、日本の株式投資型クラウドファンディングを利用したベンチャー企業の中でIPOやM&Aを行った企業は1社もありません。IPOやM&Aの事例が出てくれば、個人投資家がリターンを得る実績も生まれ、それによって株式投資型クラウドファンディングの認知が拡大し、利用を検討するベンチャー企業、そしてベンチャー企業への投資に関心を持つ個人投資家も増えてくるのではないかと思います。

 今後は、IPOやM&Aを行うベンチャー企業も現れてくる可能性があるので、その動向に注目したいと思います。

著者:升井 亮(ますい りょう)
京都大学経済学部卒業後、サイバーエージェントに入社。最注力事業AbemaTVの経営企画部門にて戦略立案に従事。その後XTech Venturesにて、D2C・人材・広告・シェアリングエコノミー・ヘルスケア等、8社の投資実行を担当。2018年7月、イークラウド株式会社を創業し、執行役員に就任。現在株式投資型クラウドファンディング事業の開業準備中。

Text by Ryo Masui

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