今、世界が立ち向かうべき課題は何か? SDGsから読み解く世界の現状

Lenka Petrouskova/Shutterstock.com

著:原 佑理子(クラウドクレジット株式会社)

 SDGs(Sustainable Development Goals)という単語を目にしたことはあるだろうか。日本語では「持続可能な開発目標」と表現され、新聞などのメディアに度々登場するワードである。経団連でも、革新技術を最大限活用することにより経済発展と社会的課題の解決の両立するコンセプト「Society 5.0」をSDGsの達成と関連して提案するなど、SDGsの位置付けに注目度が上がっている。SDGsとはいったいなにか、そして、どのようなメッセージを伝えるものなのか。紐解いていきたい。

                                                                                                                 

◆きっかけは、世界の貧困削減
 世界の貧困や飢餓は常に国際社会の主な関心事であり、1990年代から貧困削減に具体的な達成目標が設定され始めたと言われている。そして、2000年というミレニアムの節目を目前にし、各国や国際機関は、より世界規模で課題解決を図る目標設定ができないか議論を重ねていった。

 この流れを受けて、まず誕生したのがMDGs(millennium development goals、ミレニアム開発目標で)である。SDGsの前身となるMDGsは、1990年を基準値とし、2015年を達成期限に据え、8つの国際目標を掲げた。①貧困・飢餓の50%減、②初等教育の完全普及、③ジェンダー平等と女性の地位向上、④乳幼児死亡率の30%減、などが8つの目標例である。年間10兆円を超える規模の資金が目標達成のために必要とも言われ、世界中から大きなリソースが投入された。

 しかし、ターゲットイヤーである2015年が近づくにつれ、目標の到達度合いに差があることが明らかになってきた。特に、サハラ以南アフリカは目標達成からほど遠いこと、飢餓・初等教育・水分野での改善はあったものの、他分野では改善が見られなかったことなど、一部の地域や分野が開発から取り残されてしまった状況が見えてきたのである。

 こうした状況やMDGsの設定自体の反省を生かした形で、2030年を次の節目とし、より良い世界や社会の持続的な発展と実現のために新しく制定されたのがSDGsである。

◆ミレニアムから、30年後の世界を見据えて
 SDGsは、2015年に誕生した「2030年を年限とした17の国際目標」である。17の目標については、こちらの図をご覧いただきたい。 

 この17の目標の下に、目標達成度合いを測るためにさらにターゲットが設定されている。例えば、「目標1. 貧困をなくそう」の下に置かれているターゲットには、次が含まれる。

1.1 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
1.2 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。

 半減などの数値ターゲット設けることで、目標の達成度合いを計測し、進捗を把握する構造になっている。8つの国際目標が設定されていたMDGsと比べると、SDGsは目標数だけでも17に増え、かつ数値目標がより細かく設定されている。

 加えて、SDGsの大きな特徴は、「地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)こと」を誓った点である。前身であるMDGsでは、日本やアメリカといった先進国は対象に含まれず、あくまで目標の対象は開発途上国であった。しかし、SDGsにおいては、例えば、先進国ではあるものの子どもの貧困問題や国内の貧困格差の実態が明らかになっている日本は、SDGsの「目標1. 貧困をなくそう」の対象国となる。経済や社会発展のレベルに関わらず、世界中の人間一人ひとりの存在に目を向け、課題解決または改善を図っていくことがSDGsの基本的な姿勢であるとも言える。

◆目標達成にむけて
 このように、SDGsは、2030年を目標年限とした国際目標の集まりである。言い換えると、世界が解決するべき課題の一覧でもある。移民難民問題、気候変動、戦争や紛争、子どもの保護、貧困など、人によって世界の課題感はさまざまだ。SDGsは、こうした多種多様な問題を17のテーマにまとめ、世界に向けて発信し、共有している。SDGsの達成に不可欠なものは何か。一つには、「目標17. パートナーシップで目標を達成しよう」の意識である。公的機関、民間企業、学術界、市民社会などが同じ課題意識の下に連携し、結びつきを深める。これが目標達成の一番の近道であるのかもしれない。


著者:原 佑理子(はら ゆりこ)
2006年慶応義塾大学総合政策学部卒業後、モルガン・スタンレー証券とニューバーガー・バーマンにて機関投資家向けヘッジファンド営業を担当。その後、国際協力の分野に転身し、UNICEFリベリア事務所、日本ユニセフ協会広報室、国際支援団体などで開発途上国における子どもの支援に携わる。2018年より、クラウドクレジット株式会社参画。パリ政治学院(Sciences Po)と東京大学大学院総合文化研究科で修士号取得。同大学院博士課程在籍中。

Text by Yuriko Hara

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