台湾の歴史的ビジネス街・迪化街、挑む「保全」と「生活」の絶妙なバランス

迪化街の最北端にある「迪化街十連棟」。観光スポットであるとともにオフィスや小売店が2階に並ぶ(筆者撮影)

◆求められる歴史と現代生活との絶妙なバランス感覚
 しかし迪化街のリノベーションも進化を続けている。当初原点回帰はかなり厳しい指定を受けていたようだが、現代的生活との間で改善を求める方法も専門家たちの間で議論され続けている。

 呂さんは、「重要なのは、『可逆性』を意識した建物作りだ」と話す。建物の原型に使われたものにできるだけ手を加えず、保護するように手を入れる。それは将来的に新たに手を加えたものを外せば、また原型を蘇らせられることができるようにだという。

 現存する古い支柱や構造上の重要な部分を保全した状態で、現代人の生活に合った建物にリフォームするために、呂さんら建築家たちは古い建物に耐震・耐久性の高いスチールフレームを取り入れることで、建物のオリジナルの構造を生かしつつ、新たな空間を創出できるようになった。また現在では、一進や二進をつなぐ「中庭部分」も、原型は屋外でも、透明の天井を採用することで、室内の体を保てるようになったという。

鉄板補強は「可逆性」を意識したリノベーション手法だという(呂大吉建築師事務所提供)

コンビニのセブンイレブンも歴史的建造物と共存する。透明の天井が設置された2階の中庭部分をはじめ、気軽にコンパクトな三進構造を見ることができる(諸隈紅花さん撮影)

Text by 寺町 幸枝