フランスで男でも女でもない代名詞「iel」登場 個人主義の行きつく先は?

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◆極端な個別化が進んだ先にある社会
 同討論番組では、ハフィントンポストの政治局チーフ、ラ・クロワ紙編集長、ドキュメンタリー映画のプロデューサー、IFOP世論調査機関の世論部長らが意見を交わし、その内容は性差別問題から性的マイノリティ問題まで広く及んだ。その中で最も筆者の心に響いたのは、ラ・クロワ紙のドゥ・ゴールマン編集長が鳴らした警鐘だ。同氏はマイノリティを尊重することは正しいことであり、若者の多くがそういう考えであることを評価する一方で、こうした極端な個別化が進んだ先にどのような社会があり得るのかと疑問を投げかけている。「何をするにも一人ひとりの特殊性を考慮に入れなければならない場合、人々を何かひとつの目的にまとめるにはどうすれば良いのか? そこに(極端な個別化の)危険性がある」。

 ジェネレーションZを見ればわかるように、これからの世代にとってダイバーシティは許容するかどうかのレベルではなく、必然であり不可欠なものだ。彼らの開かれた価値観が、それゆえに個別化していく社会にどう対応していくのか大いに気にかかるところだ。いずれにせよ、反対派にとっては皮肉なことだが、彼らの批判のおかげでielという語の認知度はぐんと上がった。今後どの程度普及するのか、こちらも注視したい。

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Text by 冠ゆき