男子でも女子でもない 若者の間で性自認の多様性広がる 米国

Leila Navidi / Star Tribune via AP

 これまで想定されていたよりもはるかに多くの十代の若者たちがトランスジェンダーであるか、または、女子、あるいは、男子といったくくりだけで性別を分けようとする考え方を真っ向から否定し、これまでにない言葉で自らの性を表わして認識しようと試みていることが最近の調査で明らかになった。

 この調査は、9年生(編注:日本では中学3年生)と11年生(同高校2年生)の学生たちを調査の対象とし、その3パーセント近くがトランスジェンダーであるか、または心と身体の性の不一致を抱えている、と見積もった。これは、それだけ多くの男女が、必ずしも出生時に判定された性別を自認しているとは限らない、ということを意味する。「ぼく」や「わたし」という表現の代わりに、単に「自分」といった中立代名詞で自分のことを指そうとする子供たちもここに含まれる。

「性自認の多様性は、人々の予想の範囲を超えて社会に普及している」と語るのは、トランスジェンダーの心身の健康研究の分野で指導的立場にあるミネソタ大学の博士研究員、ニック・ライダー氏だ。

                                                                                                                 

 この調査は2016年に行われ、ミネソタ州全体のおよそ81,000人の十代の若者が調査の対象となった。

 その結果、2,200人近くの若者が、トランスジェンダーであるか、または心と身体の性の不一致を抱えていることが判明した。また、以前に実施された調査結果を反映し、この子たちは心身の健康状態が他の子供たちよりも不安定であることがこの調査で浮き彫りとなった。調査では設問がなかったのだが、ライダー氏は、心身の健康に差がある理由として、いじめや差別が考えられる、と言った。

 この調査は、ミネソタ州在住の9年生と11年生の十代の若者たちが対象だったが、その結果から、アメリカ全体の同じ学年の生徒たちの中で、トランスジェンダー、あるいは心と身体の性の不一致を抱えている若者の人数を推定できる、とライダー氏は語った。

 この調査結果は、月曜日にペディアトリック誌(小児科専門誌)に掲載された。

 昨年実施されたカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)による調査結果は、13歳から17歳の十代の若者のうち、0.7パーセント、つまり、およそ15万人の若者がトランスジェンダーであると推定したが、今回の研究は2学年だけしか調査の対象としていないが、十代の若者のうちトランスジェンダーと推定される若者の比率はもっと高い、という結論が出た。昨年のUCLAの調査では、政府が実施した成人男女に関する調査結果を用いてトランスジェンダーの子供たちの人数を推定したが、政府実施の調査結果は、アメリカの成人男女の0.6パーセント、すなわち、約140万人がトランスジェンダーである、と推定していた。

 トランスジェンダーにまつわるさまざまな障害や問題に対する意識が高まったことで、自分がトランスジェンダーであることを告白したり、自らの本当の性別の同定を試みたりする十代の若者が増加した、と確信する専門家もいる。

「トランスジェンダーへの認知度が高まり、彼らは自分がトランスジェンダーであることを告白したり、口を閉ざしているよりも身体と心の性の不一致について語ったりするほうが安全だ、と気づいたのかもしれない」とライダー氏は語った。

 しかし、ライダー氏は、昨年のUCLAの調査と今回のライダー氏の調査におけるトランスジェンダーの推定人数の違いは、性同一性に関する質問方法の違いが反映されている可能性がある、とも言った。

 アメリカ疾病予防管理センターは、信頼性の高い回答を得るための適切な質問を用意することが難しい、として、これまで一度も若者を対象としたトランスジェンダーの実態調査を実施したことはなかった。

 ライダー氏の分析した調査では、十代の若者たちに出生時に判定された性別を尋ね、さらに、自身がトランスジェンダーだと自覚したり、同性愛指向に気付いたり、自分の性に対する意識が流動的であると感じたり、しばしば自分の性別はどちらなのか不安に思ったりしたことがあるかどうかを尋ねた。子供たちには、性転換するための手術や医学的な治療を受けたことがあるかどうかは質問しなかった。

 ミシガン大学で教鞭をとるトランスジェンダー医学の権威、ダニエル・シュマー博士は、この調査に付随する意見をペディアトリック誌に投稿し、この研究は、ごく初期の調査におけるトランスジェンダーの推定人数は「桁違いに過小評価されていた」とする他の調査結果を支持するものだ、と力説した。同博士はまた、予想以上にトランスジェンダーの人数が多いことは、医師や教師がこれまで抱いて来た視野の狭い性別観を捨て去るべきである、という戒めにつながるだろう、と述べた。

「若者たちは『男か、女か』という単なる二元的な考えを拒否するようになっており、彼らは、大人たちもそれにならうように要求している」とシュマー博士は言う。

 トランスジェンダーである十代の若者に影響を及ぼす医療格差を軽減するために、医師たちは、彼らが自身の性をどう認識しているのか、そして、これまでにいじめや差別、迫害を受けた経験があるかどうかについてよく話を聞き、心と身体のケアを快適に受けられるように努めなければならない、とライダー氏は言う。さらに 「そうすることが彼らトランスジェンダーの能力を引き出し、社会の一員としての意識を持たせ、思いやりの心で彼らを包みこむことになるのだから」とても重要なことなのだ、と続けた。

 米国小児科学会の方針は、小児科医は十代の若者に対してできるだけ無性語を使い、彼らが「性同一性意識の目覚め」について快適に話せるような環境づくりが不可欠である、と定めており、ライダー氏の助言はこの方針に同調するものだ。

By LINDSEY TANNER, Chicago (AP)
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP

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