女子を勇気づけてくれる「偉大な女性たち」に脚光 世界で新しい偉人伝がブームに

Tatiana Bobkova / Shutterstock.com

 第一生命保険が発表した「大人になったらなりたいもの」の最新調査結果によると、女子は21年連続で「食べ物やさん」が、男子は15年ぶりに「学者・博士」が1位だった。一方、海外では逆に、研究者に憧れる女子が増えているようだ。その背景には、女性の伝記の世界的ブームがあった。

◆女の子の自尊心を高めるロールモデルが続々と登場
 この2、3年、女性のロールモデルを紹介した児童書が話題だ。なかでも、『世界を変えた50人の女性科学者たち』(レイチェル・イグノトフスキー著、野中モモ訳/創元社)、『世界を変えた100人の女の子の物語』(エレナ・ファヴィッリ、フランチェスカ・カヴァッロ著、芹澤恵、高里ひろ訳/河出書房新社)は日本でもこの春、翻訳・出版された。前者は、STEM(科学・技術・工学・数学)分野で功績を残しつつも埋もれていた50人を、後者は多彩な分野で活躍する女性100人を紹介している。後者は、クラウドファンディング史上最高額の資金(約68万ドル)を集めたことでも注目を集めた(続編はそれを上回る約87万ドルを調達)。

 これまで偉人伝といえば、キュリー夫人やナイチンゲールなどごく一部の女性を除き、男性の伝記が多かった。だが、前掲2書などの人気を受けて海外では類書の刊行が相次いでおり、多くのメディアが紹介している。例えば、GOERIE.COMでは、年齢別に新旧とりまぜて類書を紹介しており、おとぎ話風の物語からDCヒロインをモチーフにした本までじつに多彩で、人気ぶりがうかがえる。

 そうした本に登場する女性たちの共通点は、自分の意志を表に出すことを恐れず、読者を勇気づけているということである。かつては「王子様に助けられて幸せになる」といったヒロインが主流だったが、近年のディズニープリンセスを見ても明らかなように、今は主体的な人物像が好まれているようだ。

◆理系分野で活躍した女性をメディアが紹介
 ブームと関連して、理系分野で活躍した女性の再評価も進んでいる。ガーディアン紙(4月18日)では、専属コラムニストのリアーノン・コスレットが、宇宙開発分野に足跡を残した女性たちを詳説した。NASAで働いた女性たちを描いた伝記映画『ドリーム』(2016年)にも触れ、人類史的な躍進に関わりながらも、女性であるがゆえに埋もれてきたことを述べている。記事ではその要因を、16歳を境に職業のジェンダー差が出てくるためだとし、それが今でも理系分野への進出を阻んでいると指摘する。

 インディアン・エクスプレスも、理系分野で業績を残した自国の女性を紹介した。理系教育がさかんなインドでは中国についでSTEM卒業生が多く、女性伝記本も好評だ。2003年、スペースシャトルの空中分解事故で死去した宇宙飛行士カルパナ・チャウラなどの先駆的な女性が改めて注目されており、今後も掘り起こしが進みそうだ。

◆職業のジェンダー差をなくす傾向に
 フェミニズムの視点から歴史上の研究者を紹介したのがヒストリー・エキストラだ。「女性の脳は男性の脳より軽い」と主張する男性医師に対し、実証を示して否定したヘレン・ハミルトン・ガードナーなど、女性権利活動家としての顔も持つ人物を取り上げている。イギリスでは、学術的権威に挑んだこのような女性たちを描く『問題だらけの女性たち』(ジャッキー・フレミング著、松田青子訳/河出書房新社)というジェンダー絵本も出版されている。

 イギリスではまた、子ども向けキャラクター「ミスターメン リトルミス」に、「リトル ミス インベンター」という発明家の女の子が加わった。3月の国際女性デーとイギリス科学週間と連動し、「女児向けのポジティブロールモデル」として発表されたものだ。

 これらの動きをみると、外見や「女子力」に注目しがちな日本の「リケジョ」報道との差はまだまだ大きい。ただ日本でも、優れた女性たちは数多く歴史の隙間に埋もれている。新たな伝記本が読まれる日も近いのではないだろうか。

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Text by 伊藤 春奈