計画停電も発生 国営電力会社が経営危機の南ア 官民連携の改革なるか

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◆企業による課題解決なるか
 エスコムの経営状態の改善と、電力供給の安定化には時間を要することが予測されるなか、民間セクターではエスコムに依存しない選択肢の模索が図られている。アマゾンは昨年末、南アフリカで太陽光および風力発電を実施することを発表した。この計画は、2040年までにネット・ゼロ・カーボン(カーボンニュートラル)を達成するというグローバルな目標に関連したもので、昨年末の発表では南アフリカ以外にもオーストラリア、欧州5ヶ国、米国における26の新たな発電所開発プロジェクトが発表された。アマゾンは世界各国で合計127の再生可能エネルギー関連プロジェクトを実施している。電力は、アマゾンAWSのデータセンターを運営するために使われる。南アフリカでは昨年4月に初のAWSデータセンターが開設された。

 一方、フォードは今年2月、南アフリカにおける過去最大の投資となる約158億ランド(10億ドル)を投資し、首都プレトリア付近のシルバートン工場の増設と設備のアップグレード行うと発表。この工場は同社の環境・エネルギー戦略である「Project Blue Oval」に基づいて展開される。Project Blue Ovalは、2035年までにすべての生産工場で100%現地調達した再生可能エネルギーを使用することと、2050年までにカーボン・ニュートラルを達成することを掲げた同社のグローバル目標の達成に向けた取り組みだ。シルバートン工場では、屋根に太陽光パネルを設置した4200台分の駐車スペースを建設中。2024年までに、工場を完全にオフグリッド化し、エネルギー自給自足とカーボン・ニュートラルを達成すると同社は発表した。

 さらに、テスラは南アフリカでの家庭用蓄電池「パワーウォール」の販売予約を開始した。テスラCEOのイーロン・マスクは南アフリカ出身。テスラ車はいまだ南アフリカ国内では展開していないが、車に先駆けて蓄電池の展開をする計画のようだ。南アフリカでパワーウォールを導入できる個人は、一部の限られた富裕層ではあるが、太陽光パネルと蓄電池の導入により、エスコムの不安定な電力供給に頼らずオフグリッド化するという選択肢は、魅力的なものだ。

 南アフリカのエネルギー資源は、7割を石炭が占め、再生可能エネルギーの比率は約1割という現状だ。一方、再生可能エネルギーに対する関心は高まりつつある。地理的環境からとくに太陽光と風力の自然エネルギーの活用は期待される。南アフリカのユニークなベンチャー、サン・エクスチェンジ(Sun Exchange)は、ビットコインとクラウドファンディングを活用し、アパート、スーパー、学校などの屋根にソーラーパネルを設置・配電する事業を展開している。サン・エクスチェンジは、ソーラーパネルを設置する物件を探し、自社のクラウドファンディング・サイト上でプロジェクトを公開する。世界中の誰でもが、1口6-7ドルの額でソーラーパネルに投資することができる。ファンディングが成功し、ソーラーパネルが設置されたあとは、20年間のリース・売電契約に基づき、毎月ソーラーパネルの使用量を設置物件のオーナーから回収することができる。やりとりはオンライン上で完結し、投資はビットコインもしくはクレジットカードが使える。毎月の使用量回収通貨にもビットコインを選択することができる。

 エスコム再建の見通しが見えづらいなか、政府もこうした民間のプロジェクトを歓迎しているようだ。今後も、さらなる電力需要の高まりが予測される南アフリカにおいて、民間主導のオフグリッド、クリーンエネルギーの選択肢が、今後ますます増えていくことに期待したい。

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Text by MAKI NAKATA