有事に備える台湾 防空壕、民間防衛ハンドブック、軍事訓練

避難訓練に参加する台北市民(7月25日)|Chiang Ying-ying / AP Photo

 また、台湾政府は最近、市民の軍事訓練義務の期間を現行の4ヶ月からさらに延長する可能性を示唆した。台湾では2014年に徴兵制が廃止となり、今日は志願制となっているが、兵役を志願しない男性も4ヶ月の軍事訓練を受ける必要がある。延長期間について1年という数字が上がっているが、多くの市民はこれに肯定的な見方を持っているという。最近では、有事に備えた退避対策や自己防衛対策、食糧の蓄えや応急手当などのノウハウを身につけようとする動きが広がり、若者たちが警備会社主催の軍事訓練に参加し、エアガンの使い方から携帯用対戦車兵器を含む各種武器の取り扱い方を学んでいるという。

◆有事への警戒を強める台湾市民
 こういった台湾市民の変化は世論調査結果からも明らかだ。たとえば、台湾民意基金会が6月に公表した世論調査によると、バイデン大統領が5月に訪日した際、台湾有事で米軍が関与すると発言したことについて、「信じられない」と回答した市民は50.9%、「信じる」と回答した市民が40.4%となり、懐疑的な見方が過半数を占めた。また、台湾民意基金会が3月に公表した同様の世論調査によると、台湾有事の際に米軍が関与すると思うと回答した人は34.5%と、昨年10月の65%から大幅に低下した。このように米中対立が激化し、台湾情勢で緊張が高まることに比例し、台湾市民の懸念は行動や数値といった形で大きく変化している。

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Text by 本田英寿