「欧米VS中国」の最前線となる台湾海峡

フィリピン海で共同訓練する日米英の軍艦(10月3日)|Gray Gibson / U.S. Navy via AP

 一部海外メディアによると、10月中旬、米軍の駆逐艦とカナダ軍のフリゲート艦が共同で台湾海峡を通過したという。この件について、中国軍の報道官は台湾海峡の安全と平和を損ねると強く反発し、米国とカナダが結託することは中国に対する挑発であり、極めて悪質だと批判した。昨今、台湾をめぐっては、10月に入ってから4日までに中国軍の戦闘機や爆撃機149機が台湾の防空識別圏に侵入するなど情勢が緊迫化している。蔡英文総統も訪台したアボット元豪首相やフランス上院議員団と会談し、国家関係を強化することで合意するなど、中台関係はこれまでになく冷え込んでいる。

◆悪化するカナダと中国の関係
 今回、カナダ軍のフリゲート艦が台湾海峡を通過したことは極めて異例だ。カナダと中国との関係も近年、かなり冷え込んでいる。

 今年8月、中国ではカナダ人への裁判が相次ぎ、遼寧省の高等裁判所は同月10日、麻薬密輸の罪で死刑判決を受けて上告していたカナダ人男性の裁判を開き、男性の上訴を棄却し(これによって男性の死刑が確定)、その翌日に同省の
地方裁判所で開かれた公判でも、スパイ容疑で逮捕されたカナダ人男性に対して懲役11年の判決が言い渡された。

 カナダ政府は相次ぐ有罪判決に恣意的で政治的意味合いが含まれていると強く反発した。この背景には、2018年にカナダで逮捕された中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)幹部をめぐる件、そして、新疆ウイグルの人権問題で、今年3月、カナダが米国や英国とともに中国関係者への制裁を発動したことがあるとの見方もある。米国だけでなく、カナダやオーストラリアなどほかの欧米諸国と中国の関係も悪化している。

Text by 和田大樹