推計23兆円とも…謎に包まれるプーチン氏の資産 資産凍結の効果は?

Sputnik, Kremlin Pool Photo via AP

 プーチン氏の富は、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)を脅かし、現金や株式の供与を強制して築かれたという説もある(CNN)。ロシアの政治アナリストでプーチン氏に批判的なスタニスラフ・ベルコフスキー氏は、プーチン氏が保有するロシアの石油・ガス会社の株式から、資産は700億ドル(約8兆円)と2012年に推定している。スウェーデンの経済学者アンデルス・アルスンド氏は、プーチン氏の友人がそれぞれ数億~数十億ドルをプーチン氏のために保有していると見積もり、総資産は1000億ドル(約11.5兆円)から1500億ドル(約17.2兆円)としている(フォーチュン誌)。

 投資家でプーチン氏に批判的なビル・ブラウダー氏は、2017年に米上院でプーチン氏の資産は推定2000億ドル(約23兆円)と述べ、世界一裕福な人々の一人だと証言している。これはジェフ・ベゾス氏、ビル・ゲイツ氏、イーロン・マスク氏の資産を上回る額だ。もっとも、亡命したロシアの富豪セルゲイ・プガチョフ氏は、ロシア領内にあるものはすべて自分の資産だとプーチン氏は考えていると述べ、資産の計算自体が的外れだとしている。(同)

◆制裁は象徴的 狙いは資産差し押さえではなく信頼失墜
 謎とされるプーチン氏の資産だが、マネーロンダリング対策の専門家、ロス・S・デルストン氏は、アメリカ、EUの諜報機関や法執行機関が追跡していると考えることはできると指摘。もし彼らが本気になれば見つけ出すことは可能だとしている。もっとも、プーチン氏の資産を凍結してもウクライナへの攻撃の抑止効果はほとんどないと見ている。アメリカが国家元首を個人的に罰することはまれで、今回は北朝鮮の金正恩氏やシリアのアサド大統領などの専制君主と同列に扱うことで、世界におけるプーチン氏の信頼を失墜させるという象徴的な意味の制裁だとしている。(CNN)

 一方、プーチン氏のものと考えられている1億2500万ドル(約144億円)の豪華ヨットが、ウクライナ侵攻の2週間前に、修理のため置かれていたドイツから修理完了を待たずしてロシアに戻ったという報道もあり(タイム誌)、プーチン氏が制裁を予期していたとも考えられる。デルストン氏は、「富裕層は十分な蓄えがあっても資産に執着しやすい」と述べ、プーチン氏にとって制裁の痛みはゼロではないとしている(CNN)。

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Text by 山川 真智子