米空母「ジェラルド・R・フォード」、22年配備へ 建造費1.4兆円、最新装備を搭載

Official U.S. Navy Page / flickr

◆電磁式カタパルトなど最新装備
 フォードは数々の新型装置を搭載する。カタパルトは電磁式とし、従来よりも少ない要員数で運用できるほか、射出速度も向上している。戦闘機を昇降するエレベーターは、ニミッツ級で採用されているケーブル式を改め、リニアモーターで駆動する電磁式とした。エレベーターは全11基を予定しており、未完の4基を目下建造中だ。米海軍協会はこれらの改善により、出撃率の30%向上が見込まれると説明している。さらにフォードには艦全体にモジュール式の設計思想が取り入れられている。ニミッツ級では全体の設計が密に結合し、部分的な改良のみで新兵器の搭載に対応するのが難しい問題があった。ハフマン少将は米海軍協会に対し、「(フォードでは)新装備が登場したり、新たな航空団の構成を検討したり、新技術がもたらされたりした際、従来よりも容易に対応して取り入れることができます」と語っている。

 装備だけでなく性能試験においても、近年ではめずらしい試みを取り入れている。6月に衝撃耐性テストが行われ、艦体付近の海中において4万ポンドの火薬を複数回爆発させた。爆発時の距離は実戦より離れていたものの、火薬量としては一般的な機雷の20倍に相当する。テストによる主だった浸水や火災などは発生しておらず、爆風に対する強い防護性能が確認された。この衝撃試験が行われるのは34年ぶりとなる。(ビジネス・インサイダー誌

◆運用にも一工夫が
 運用面では、空母打撃群とよりスムーズな連携を行うべく、試験運用中の体制を見直している。フォード就役後の18ヶ月にわたる試験期間中、空母打撃群の司令官と職員が同乗し、艦内で生活をともにした。配備前に打撃群の司令官が空母入りするのは異例のことだ。一足先に実際に空母に滞在することで、指揮命令系統のあり方から生活場所までを把握し、配備後の行動を円滑にする狙いがある。米海軍協会によると、現段階で全団が乗船しているわけではなく、整備期間の終了を待って全員が乗り込むという。

 フォードは今回の整備をもって完成となるわけではなく、モジュール式のメリットを生かし、今後も随時改良が施されることになりそうだ。一例としてビジネス・インサイダー誌は、最新のF-35CライトニングII戦闘機をフォードに搭載する場合、艦の一部を改修する必要があると指摘している。2022年内とされる配備以降も、断続的な改修による強化が行われる可能性がありそうだ。

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Text by 青葉やまと