「地中海食」でサステナブルな未来都市へ イタリア・ポリカで進む一大プロジェクト

イタリアのポリカ市|mezzotint / Shutterstock.com

◆ポリカの動き
 ポリカ市では、食の生産面において、地中海食に関連する食材やワインの生産を、持続可能な生産方法で資源を守りながら行う手法を取り入れている。ポリカにあるナポリ・フェデリコ2世大学農学部とともに、アグリテックの新興企業とのインキュベーションプログラムを行ったり、EUを代表するグローバル企業「ダノン」とともに、食のアップサイクル研究にも取り組み始めたという。

 また長寿と健康をテーマに、「地中海式の食生活」から得られる利益の研究に加え、地域の経済的競争力を高める手段の予測モデルを構築する「地中海リビングラボ」を設立した。さらに生活習慣病予防と公衆衛生をテーマにした医療サービスの提供や、遠隔医療の提供も行う。

 さらに新しい都市計画を立ち上げ、効率的な建物を建築することに始まり、都市廃棄物の一部からプラスチックのリサイクルを行う実験プラントを作るといった、研究・教育の実施を組み込んだ街づくりも行われている。

 こうしたすべての活動にFFIが中心的に関わり、プロジェクトの規模が一部の関係者だけでなく、街に関わるあらゆるステークホルダーを巻き込んで動いている点に注目したい。来日したロヴェルシさんは、こうした包括的な動きを行うために、6つの視点を重視しているという。

1. 政策提言者の目線
2. 自然や環境、地球の目線
3. 人間の健康という目線
4. 社会やコミュニティという目線
5. 文化や伝統継承という目線
6. 経済的発展という目線

 この6つの視点すべての面を合わせて考慮することが大切だと話す。ロヴェルシさんは、「ポリカ市の成功は、すでにイタリアやEUのほかの自治体からも関心が寄せられている。COP27ではポリカ市の関係者とともに、これまでの歩みを世界と共有する予定だ」と話していた。

COP 27に登壇したロヴェルシさんらは、ポリカ市での活動の全体を説明するとともに、
「食」というものが社会のあらゆる活動つながっていることを力説した。

COP27直前の11月に来日したFuture Food Institute代表のサラ・ロヴェルシさん

Text by 寺町 幸枝