お金について正しい決断をするコツ「自分の感情に注目する」
お金はときに激しい感情を引き起こす。その結果、支払いができなかったりお金を使いすぎたり、後味の悪い結論にいたることもある。金銭に関してより的確な決断をするため、お金に直結する自分の感情を深く知ることを読者に促す書籍が話題を集めている。
『The Art of Money Workbook(お金のコツを学ぶワークブック)』を6月に出版したバーリ・テスラ氏は、コロラド州ボルダーを拠点にするファイナンシャル・セラピストである。同氏は「お金に関する意思決定のうち、85%か90%を感情が支配しています。お金に対してどのような感情を抱いているのか理解しておく必要があります。そうすれば、ただ途方に暮れたり逃げ出したくなったりすることはありません」と話す。
数年前、夫と車の販売店を訪れたテスラ氏は過呼吸に陥った。化粧室へと席を外し、なぜこれほどまでに不安を感じるのかと自問自答した。お金について早急に決断することに強い抵抗感を抱いていることに気づいた同氏は、購入までにより多くの時間をかけて検討することにした。その結果、最善の決定を行うことができたという。
◆お金にまつわる自分のエピソードについてよく考えること
ロサンゼルスを拠点とする作家兼プロデューサーのレベッカ・ウォーカー氏は、エッセー集『Women Talk Money: Breaking the Taboo(女性が語るお金の話:タブーを覆す)』を執筆するにあたり広くエピソードを集めた。そこで、多くの人がお金を持つことを恥ずかしく感じていること、両親よりも多額のお金を持つことに罪の意識を抱いていること、そして金銭的な決断を早急に行うことに後悔の念を抱いていることを見出した。
同氏は「これまでに出会った多くの女性たちが、お金にまつわるつらい経験を抱えていました。煩わしく厄介な経験です。そして多くの場合、このような問題をなんとか自分たちで解決しようとするため、支援を得る機会がますます得られない状況でした」と話す。
ウォーカー氏は読者に対し、お金にまつわるエピソードを自分自身で深く考えることを勧めている。こうした経験は幼少期にさかのぼることも多々あり、お金に対する考え方に影響を及ぼしている。「お金について忘れられないエピソードを少なくとも一つ、そして自分の生き方を方向づけてきた豊かさや貧しさについての記憶もしくは基本的な考え方を一つ見出すことから始めてほしいのです。いま、そのエピソードをどのように変えたいと思いますか」と問いかける。
エピソードを変えることで、お金の使い方に明らかな変化をもたらすこともある。たとえば、両親が貯蓄をせずに浪費している姿を見ながら育ったとする。その場合、50/30/20予算ルールを参考にするなど、貯金する方法について自分で勉強する必要があるだろう。このルールは、手取り収入の50%を生活必需品に、30%を娯楽費に、20%を借金返済や貯蓄に回すことを勧めるものだ。
◆お金にまつわる最近の経験についてもよく考えること
テスラ氏の本では「食料品店で精算をしているとき、または何か別の方法で物品やサービスを購入したとき、どのような感情が沸き上がってきたのか」を問う。読者に対し、お金による取引について直近に行った3回について考えてみるよう促しているのだ。
恥じらいや怒り、心配、罪悪感、喜び、悲しみ、幸せは一般的な反応である。同氏は「過去のお金の失敗が思い起こされるかもしれません。そのことについて、何らかの認識と理解を深めましょう」と呼びかける。
◆体の反応を観察すること
とくにパートナーとお金について話をしているときや大きな買い物をするときなど、テスラ氏が車の販売店で行ったような、自分の体の状態を観察することを同氏は推奨する。呼吸の様子など身体的な感覚に集中し、沸き上がってくる気持ちや記憶を観察しよう。
緊張を感じた場合には、一旦中断し、休憩したり外に出たりしてもよい。テスラ氏は「お金に絡む感情は完全にはなくなりませんが、起伏の激しさをやわらげることはできます」と話す。
◆自分を落ち着ける方法を見つけること
『Finance for the People(みんなのためのファイナンス)』のなかで著者のパコ・デ・レオン氏は、自分を落ち着かせるための方法をリストアップし、家の購入など金銭的に大きな決断を迫られる際には読み返すよう提案している。ファイナンシャル教育の提唱者であり、ミュージシャンでもある同氏はロサンゼルスに拠点を置いている。散歩することや本を読むこと、楽器を演奏することなどをリストに挙げている。
デ・レオン氏は「私たちは感情に基づいて決断を下し、その決断を後で正当化します。もし先に感情をうまく抑えることができれば、『自分の感情を自覚しているので、いまは理性を保つことができている』と前に進むことができます」と話す。
同氏は、高額にのぼる奨学金を承諾するかどうかを決める際にこの手法を取り入れた。まずストレスを取り除き、表計算シートに数字を打ち込んで計算した結果、法科大学院への進学を取りやめた。
◆借入金に向き合うこと
デ・レオン氏によると、クレジットカードによる借入であろうと奨学金であろうと、借金を抱えることに恥じらいを感じる人は多いという。同氏は『DearDebt.com』のなかで、手紙を書くことで自分に言い聞かせている借金にまつわるエピソードを変えることを提案している。「あなたの気持ちを表現してください。単純なものではないとわかるでしょう。お金を借りられたことについて、借金に対して感謝してはどうでしょうか」と提言する。
このような気持ちになることができれば、借金に取り組むことは以前より容易になる。小さな借金を先に返済しても、雪だるま式に借金が増えていくような運用方法になりかねない。
◆過去の自分の過ちを許すこと
ファイナンシャル・カウンセラーであり、ファイナンシャル・コーチングのプラットフォーム『モドム・ソリューションズ』を創設したマイケル・G・トーマス・ジュニア氏によると、自分を思いやることは有効的な方法である。ジョージア州アセンズを拠点とする同氏は「ほかの誰かが間違いを犯したとき、私たちが寛大さや親切心を示すことが多い」ことに触れ、過去の過ちについて自分自身を許すことで前に進むことができると述べる。
ウォーカー氏は自著のなかで、投資方法を学ぶことの代わりに、買い物で散財していた過去の自分を許すことについて言及した。同氏は「こんなひどいことをしてしまったという考え方をやめ、自分に思いやりを示すことで心が解放されました。それにより、より健全な方法で前に進むことができたのです」と話す。
By KIMBERLY PALMER of NerdWallet
Translated by Mana Ishizuki