なぜ日本車が世界で選ばれているのか? 海外メディアの見る強みとは

♦︎軽が開いた活路
 戦後の混乱から生まれた生産方式に加え、日本車の知名度向上の陰の功労者となったのが、日本独自の軽自動車の規格だ。一般に海外のユーザーにとって軽自動車は、乗用車を押しつぶしたような、ある種奇抜なデザインだと受け止められることが多い。CNN(2017年11月1日)もそのデザインについてやや否定的な立場で、ほかの日本製品に見られるような美的センスが感じられないと嘆く。しかし、1960年代から70年代にかけて日本メーカーが海外市場向けの車を企画した際には、軽で培った小型化と低燃費の技術が強い武器となった。60年代から70年代前半にかけて、小型、好信頼度、低燃費を武器に欧米に攻勢をかけると、トヨタ カーローラやホンダ シビックなどが飛ぶように売れた。

 日本車のコンパクトさは、米モーター・ビスケット誌も取り上げている。実際のところ一時はチープで小さすぎるとされ、笑いのタネになった時期があったようだ。しかし70年代から80年代になると、快適、低燃費、頑丈、そして安価という認識が広く浸透した。いまでは日本車は生活のあらゆるシーンに溶け込んでいると同誌は述べている。

 ちなみに2015年、日本国内では軽自動車に対する増税が実施された。軽の製造を縮小し、より国際競争力の高い車へのシフトを国内メーカー各社に促す狙いが政府にあったものと見られる。海外進出の思わぬ味方となった軽規格だが、今後は軽の技術をいかに転用するかが問われることとなるだろう。オート・エボリューション誌はプジョー 108のようなコンパクト・ハッチバックの登場を予想すると同時に、ヨーロッパ向けの電動スクーターや家庭用ホバークラフトの登場など、画期的な小型プロダクトの投入にも期待を寄せている。

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Text by 青葉やまと