なぜ日本車が世界で選ばれているのか? 海外メディアの見る強みとは

 世界有数のレベルに成熟した日本の自動車産業。日の丸ブランドへの評価は海外でも高く、高い信頼性と実用性には定評がある。近年では未来感漂うデザインに、EVやスポーツカーなど、イノベーションを武器に各分野で存在感を示している。国内産業にとってハンデとなった戦後の資源不足と国内専用の軽自動車規格だが、これらを逆転の発想で活用したことで勝利への扉が開かれた。

♦︎不動の信頼は70年代から
 1970年代以降、日本車は時と場所を超えて高いブランド価値を築いてきた。ポイントは信頼性だ。それまで故障がつきものだったクルマの概念を根底から変え、修理の必要性を大幅に削減している。カナダのグローブ&メール紙の元特派員だったピーター・チェニー氏は、同紙の記事で自らの所有経験を振り返る。70年代後半、父親所有のホンダ アコードが故障知らずであったのに対し、チェニー氏のVWは悪夢のような修理続きだったという。電圧が不安定でヘッドライトの明るさも安定せず、あるときは走行3万キロに満たないのにシャフトの一部が壊れ、旅の途中で夫婦で立ち往生してしまった。それ以降チェニー氏は日本車好きに転身しており、日本メーカーは当時としては考えられなかった軽量さとタフさを両立したと評価している。

 事情はイギリスでも同様だ。自動車情報誌の英カー・キーズは、イギリスの70年代といえば一般的に、クルマを買えばいくつもの製造上の問題を抱えていることが普通だったと振り返る。日産の海外ブランドであるダットサン、そしてトヨタとホンダがシェアを拡大するにつれ、オーナーたちは頻繁な修理から解放された。同誌によると80年代の日本の自動車企業は、当時のほぼすべての競合よりも頑強なクルマづくりをする、と評判だったようだ。

 オーストラリアでも好評だ。英デイリー・メール紙が伝えるところによると、2019年に豪州で行われた調査において、信頼できる自動車ブランドのトップ5を日本企業が独占した。首位から順にトヨタ、マツダ、ホンダ、スバル、日産となり、メルセデスベンツやフォードなどを上回る信用を得ている。

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Text by 青葉やまと