オーストラリアの“へそ”ともいわれる、ウルルを訪れた。かつては『エアーズロック』の名で広く知られていた、赤く雄大な一枚岩。地表に姿を見せているのは全体のわずか一部で、10%以下だという。古くから先住民アナングの人々にとって大切な祈りの場であり、現在ではオーストラリアを代表する観光地のひとつでもあるが、先住民の文化や価値観をリスペクトした運営が興味深い。
今回紹介するのは、そんな土地で味わったアボカドトースト。アボカドはオーストラリアの食文化に深く根付きよく食べられているし、アジア各国に輸出もされている。豊かな自然の恵みを感じながら頬張る一皿は、この国らしいおおらかさと健やかさを映しているようだ。

ウルルと原住民と観光事業
オーストラリアのほぼど真ん中、シドニーを発った飛行機が3時間ほどでエアーズロック空港(コネラン空港)に近づくと、地平線の手前に赤い大きな岩が見えてきた。窓から見える範囲には全くと言っていいほど人間の気配がない。
ウルル観光の拠点となるユララの街。ウルル=カタ・ジュタ国立公園のはずれにあるウルル観光のためにある居住地域で、空港、ホテルとレストラン、小さなスーパーマーケットがある小さなエリアだ。この外側には荒野が広がる。
ウルル一帯の土地を所有するのは先住民であるアナング族で、ウルルの観光収入は彼らとシェアされているのだそうだ。裸足で歩く人がいたらだいたいアナング属だと聞かされていた通り、スーパーマーケットにやってくる家族連れや子供たちを目にした。写真を撮られることには敏感なので、レンズを向けるのは控えるべきだそうだ。


到着の翌日、朝日に照らし出されるウルルを見に出かけた。東の空からうっすらと日が差し始めると、ウルルの表面に大きな影が現れて、やがて太陽の光が複雑な影を刻みながら、少しずつウルルの姿を変えていく。
ウルルに登ることができたのは2019年10月26日まで。それまでにこの巨大な岩に登り亡くなったのは37名を数える。最後の一人の犠牲は、立ち入りが禁じられる1年前に命を落とした76歳の日本人男性だった。以前から、アナングの人々は聖なる場所で人が死ぬことに対して悲しみ、危険だから登らないようにとの看板を設置していたのだそうだ。
今でも夜明け、日の入りウルルの姿を拝したり、ウルルの周りを歩くツアーが人気だ。ウォーキングルートの入り口には緊急用の電話が設置されている。この辺りでは携帯電話はつながらない。


ウルルは大きな一つの岩だが、近づくと切れ込みが入っている場所がいくつかある。その一つ奥に水溜まりがあった。雨が少ない地域ではあるが、ウルルに雨が降れば岩肌を下る滝がいくつもでき、その下に水がたまるのだそうだ。そしてそこは動物の水場になる。
夕日に照らされるウルルもまた美しい。太陽が傾けば傾くほどより深い影が刻まれて、ウルルが神秘的な深いオレンジ色に染まっていく。日が落ちてしまえば一帯は深い闇に閉ざされて、この世界の寝息が聞こえてくるようにさえ感じられる静寂がやってくる。

ウルル=カタ・ジュタ国立公園という名前の通り、ウルルから30㎞程西に離れた場所にカタ・ジュタという36個の奇岩群がある。カタ・ジュタは先住民族の言葉で「たくさんの頭」という意味だ。ちなみにウルルには特段の意味はなく固有名詞なのだそうだ。ここもまた聖なる場所で、特に夜間に儀式が執り行われる。
さて、この記事を書いている今日、ウルル=カタ・ジュタ国立公園のウェブページを見ると、「6月25日木曜日の午後2時までと26日金曜の終日、恒例のアナング族の女性の死を悼み葬儀と告別式が執り行われるため、ウルル・カタ・ジュタ国立公園は閉鎖される」という告知が4月30日付で掲示されている。
この地域は今でもアナング族の生活の地であり、ウルルは神聖な祈りの場だ。その文化は自らのコミュニティで守られている。第三者による保護が主体なのではない。彼らはこの土地にしっかりと生きているのだ。
アボカドトーストのレシピ
オーストラリアはかつてイギリスの植民地だった。いまでもその食文化はイギリスの影響を強く残しているが、人口の30%は異国で出生した移民ということもあり、アジア系の食事を取り入れた料理も多い。


いかにもオーストラリアという料理はあまりないと思われるが、レストランなどでカンガルー肉を使った料理をよく目にした。オーストラリアには3500万頭以上生息している(人口は2760万人)という統計があり(2023年)、また生息地はオーストラリアを含めてかなり限られているから、これぞオーストラリアを代表する肉と言える。ステーキ、ソーセージやケバブ、ひき肉を使ったバーガーなど多様だ。脂身が少ない赤身の肉で、その栄養素は比較的健康的と言える。野生のカンガルーしかおらず、つまり人によって飼われてはおらず、事前の中で狩猟される。飼育されるより環境負荷は低くなるのだそうだ。


日本でもカンガルー肉は流通しているが、今回は手に入りやすいアボカドを使ったアボカドトーストのレシピを紹介する。オーストラリアでは年間に一人平均5キロのアボカドが消費されるというアボカドの消費大国でもあり、生産量は年間15万トンから17万トン、国内消費以外にも日本を含めたアジア諸国に輸出されている。

アボカドをマッシュしてトーストにのせるアボカドトーストは、オーストラリアでは家庭の手軽なスナックだった。1990年代にシドニーのレストラン、Bill’sがメニューに載せ、その後2010年台に入ってインスタグラムで紹介されるとオーストラリアのみならず、世界各地でトレンドになった。
もともとはパンにマッシュアボカドを乗せ、ライム、塩コショウ、オリーブオイルを振ったシンプルなものだったが、町のカフェではいろどりの良い葉野菜を乗せたり、ポーチドエッグ、焼いたりフリッターにしたチーズ、フリッターをトッピングしたりと、様々なアレンジを楽しむことができる。

今回のレシピはシンプルにポーチドエッグと野菜をトッピングしたものだ。

材料:
・アボカド 1個 マッシャーでつぶす
・たまご 2個
・パン 1枚
・プチトマト 3個 1/4に切る
・ルッコラ 適量
・パクチー 1/2株 みじん切り
・レモン 1/8個
・オリーブオイル 適量
・塩・胡椒 各一つまみ
・酢 小さじ1/2
・チリフレーク 適量
1. アボカドをマッシャーでつぶして、レモンを絞り、みじん切りにしたパクチー、塩・胡椒を入れて混ぜる。

2. たまごを割ってざるを通して、水溶卵白(卵白の特に薄い部分)を取り除く。

3. 鍋に水500mlを入れて沸騰させ酢を入れたら、たまごを割り入れて、表面が固まったら穴あきおたまですくう。

4. パンを色よくトーストしたら1を乗せて広げて、プチトマト、ルッコラを飾って、オリーブオイルを回しかけたら、チリフレークを振る。

トッピングで様々なアレンジが楽しめる。下は茹でた鶏むね肉を加えたものだ。シンプルにマッシュアボカドだけでも十分美味しい。

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All Photos by Atsushi Ishiguro
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石黒アツシ
20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
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