中東、アフリカで深刻な小麦不足の懸念 ロシア・ウクライナに大きく依存

ロシア・トビリスカヤの小麦畑(2021年7月21日)|Vitaly Timkiv / AP Photo

◆価格上昇 供給不足なら暴動も
 小麦の市場価格はロシアの侵攻が始まってから急上昇し、各国は対応に追われている。資金不足に悩むレバノンには1ヶ月分の小麦しか備蓄されておらず、代替輸入源の確保のため、さまざまな国々との契約を模索している。(DW)

 エジプトは世界最大の小麦の輸入国で、2020年は60%をロシア、25%をウクライナから輸入した。まだ備蓄があるが、こちらも代替輸入を他国と協議中だという。ほかにも、イエメン、シリア、チュニジア、エチオピアなど、これまでロシアやウクライナに頼ってきた途上国が打撃を受けている。(DW、米ニュースサイト『アクシオス』)

 ロシアやウクライナ産の小麦は価格が安く、これも貧しい国が買い付けていた理由だとされる。また輸送費がかさむことから小麦をはじめとする穀類の輸入を北アメリカ、南アメリカに切り替えることは難しい。

 専門家は、いまのところ消費者が小麦価格の上昇を感じることはないが、政府が配給制を取り、小麦関連の商品の値上げをする時期が来ると指摘。そうなれば、すでに経済的に困窮している国々での不満が増大し社会不安が高まるとしている。(DW)

◆救世主登場? 在庫豊富で大注目はあの国
 一方、不足する小麦の代替輸入先として注目されているのが、世界第2位の小麦生産国インドだ。ロイターによれば、ここ数日で約50万トンの輸出契約を結んだという。実は5年連続して豊作となっており、大量の在庫がある点にトレーダーが目をつけた。

 インドでは国内価格は政府によって高く保証されているため、輸出は抑えられる傾向がある。しかしこのところの世界的な小麦価格の高騰で、インドのサプライヤーが輸出に対応しやすくなった。今年は過去最高の700万トンの小麦を輸出する予定で、これを機会に小麦の世界市場でのビッグプレーヤーになる兆しを見せている。(同)

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Text by 山川 真智子