ロシア・ウクライナ戦争、アフリカの視点と人種差別問題

リヴィウ駅のホームで列車を待つナイジェリア人学生(2月27日)|Bernat Armangue / AP Photo

 世界がロシアのウクライナ侵攻と、ウクライナ各地における攻撃の情勢に関して注目するなか、その影響は欧州だけでなくアフリカにも及んでいる。アフリカ人にとってもウクライナは留学先や穀物の供給国として重要な国だ。一方、戦禍から逃れようとしているアフリカ人・黒人に対する差別も浮き彫りになっている。

◆アフリカの人々への影響
 ウクライナ文科省によると、モロッコ、ナイジェリア、エジプトは、ウクライナに留学生を多く派遣する上位10ヶ国に含まれており、それぞれ8000人、4000人、3500人の留学生を派遣している。この3ヶ国からの学生が、2020年時点のウクライナにおける外国人学生の2割近くを占めるとのことだ。旧ソ連時代から、アフリカ各国とウクライナの学問交流は盛んで、医学はとくにナイジェリア人に人気がある学問領域だ(クオーツ)。ウクライナの学費は無料ではないが、欧米・アジアなどに比べて格段に抑えられる。

 教育だけでなく、貿易面に関してもウクライナ・アフリカ関係は旧ソ連時代から続いている。アフリカ各国は小麦、砂糖、圧延材、化学肥料などをウクライナから輸入しており、アフリカの輸入額は1996年の約2億ドルから、2020年の40億ドル強へと拡大している。一方、輸出額は1996年では約1.5億ドル、2020年では約8億ドルと輸入額ほど伸びてはいない。

 また、とくに北アフリカにおける食料安全保障問題も指摘されている。2020年時点でアフリカ各国は、ウクライナから29億ドル相当、ロシアから40億ドル相当の農業製品を輸入している。ロシアからの輸入の9割が小麦で、エジプトの小麦の85%はロシアからの輸入だ。チュニジアに関してはロシア外からの供給源を探る必要がありそうだ。基本的な穀物の供給量が減ることで食品価格が上昇する懸念がある。

Text by MAKI NAKATA