欧州、ヨウ素剤に客が殺到 ロシア侵攻で高まる核の恐怖

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 ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、ヨーロッパでは原発の放射能漏れや核兵器使用への危惧から安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム)を入手しようとする人が急増している。

 2018年から薬局で希望者に安定ヨウ素剤を無料配布しているベルギーでは、2月28日の1日で、3万人の希望者が薬局を訪れた(RTL 5minutes)。ルクセンブルクでも安定ヨウ素剤を入手しようと多くの住民が薬局に駆け込んでいるが、同国では薬局には安定ヨウ素剤の在庫がないため、薬剤師組合のド・ブルシー会長がその旨を公式に発表する事態となっている(RTL 5minutes)。

◆ロシア侵攻の陰に見え隠れする「核」の文字
 ロシアによるウクライナ侵攻には当初より「核」の文字がつきまとっている。2月24日の時点でロシアはチェルノブイリ原子力発電所を掌握したが、その直後、チェルノブイリ周辺では、ガンマ線の急増が検出された。フランスの放射能に関するNGO組織クリラッド(CRIIRAD)の発表によれば、「測定場所によっては20倍、30倍、40倍近くまで記録した」という。(フランス・ブルー、2/25)

 2月27日にはプーチン大統領が、核戦力を念頭に抑止力を特別警戒態勢に引き上げるよう命じた。翌2月28日にはベラルーシが国民投票により「非核地帯かつ中立」の立場を放棄し、これによりロシアがベラルーシ領土に核兵器を配備することが可能となった。

 3月3日から4日にかけては、欧州最大とされるウクライナ南部のザポリージャ原発にロシア軍が攻撃をしかけ火災が発生し、爆発が危惧される事態となった。幸いウクライナ消防隊の奮闘で消火し、現在のところ放射能漏れも検出されていないが、同原発はロシア軍の手に落ちた。

Text by 冠ゆき