ブラック・アイデンティティや文化、スピリチュアリティをテーマに作品を制作し続けたアーティスト、ベティ・サールが、日曜日の朝、ロサンゼルスで死去した。99歳だった。

遺族が月曜日に訃報を公表した。今週には100歳の誕生日を迎える予定だった。

Christina House / Los Angeles Times via AP

1960年代のブラック・アート・ムーブメントを代表する存在として知られるサールは、日用品や廃材などの「ファウンド・オブジェ」を組み合わせたアッサンブラージュ作品を切り拓き、ジム・クロウ法時代の差別的な記念品や民芸品を、ブラック・リベレーション(黒人解放)の力強い象徴へと転換させた。

彼女を代表するロサンゼルスのギャラリー、Roberts Projectsは、「象徴性に富んだ彼女の作品群は、環境、文化、政治、人種、テクノロジー、経済、歴史といった複層的な文脈を映し出しながら、時代とともに進化を続けてきた」と評している。

サールはデザインの仕事からキャリアをスタートさせ、35歳で本格的に美術の世界へ転身。その後も90代まで制作を続けた。パサデナで育ち、近隣のアルタデナに暮らすブラック・アーティストたちのコミュニティの一員として活動。初期の創作においては、サイモン・ロディアが築いた《ワッツ・タワーズ》から大きな影響を受けたとたびたび語っている。

制作は絵画、版画、彫刻にとどまらず、人形や洗濯板、アンティークなどのファウンド・オブジェも積極的に取り入れた。舟、時計、檻、祭壇といったモチーフに加え、神秘思想や宇宙論に由来するシンボルも繰り返し登場する。また、自身の星座である獅子座への言及として、ライオンのモチーフを多くの作品に配している。

Roberts Projectsは、「ブラック・カルチャーのコレクティブルや家族の遺品、生活用品を引用しながら、それらを転覆的な手法によって新たな意味へと変容させた」と説明し、「アメリカ黒人美術の先達の中でも、サールは比類なき存在である」と評価する。

1969年に制作された《Black Girl’s Window》は、後の現代美術に大きな影響を与えた革新的な作品として知られる。しかし、その価値が広く認められるまでには数十年を要し、ニューヨーク近代美術館(MoMA)が同作を収蔵したのは2019年だった。

サールはかつて、「当時のロサンゼルスにはギャラリー自体がそれほど多くなく、まして黒人アーティストを扱う場所はほとんど存在しなかった」と振り返っている。

Betye Saar
David Sprague / Artist and Roberts Projects, Los Angeles via AP

1972年に発表された《The Liberation of Aunt Jemima》は、彼女の代表作のひとつだ。作品には、黒人を侮蔑的に描いた人形や広告など、自ら収集した人種差別的な記念品が用いられている。その中心には、19世紀のミンストレル文化に由来し、白人主人に従順に仕える黒人女性像「マンミー(Mammy)」として知られる「アント・ジェマイマ」が据えられている。

しかし、サールの作品では、その人物像はまったく異なる意味を獲得する。微笑みを浮かべながらも、一方の手にはライフル、もう一方には手榴弾を携えた革命家として再構築されているのである。

この作品は、1968年にテネシー州メンフィスで暗殺されたキング牧師(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)の死を契機に生まれた。サールは後に、「キング牧師の死は私の内側に激しい怒りを呼び起こし、神秘主義者だった私は戦士へと変わった」と語っている。

また、「こうした強烈でネガティブなイメージを使うことには大きなためらいがありました。白人が黒人をどう見てきたのか、その視線が黒人同士の自己認識にも影響していることを考えていたからです」としつつ、「作品を救ったのは、アント・ジェマイマを革命家へと変えたことでした」と述べている。

130年以上続いた「アント・ジェマイマ」ブランドは、ロゴの起源が人種的ステレオタイプに基づいていることを認めたクエーカー・オーツ社によって、2020年に廃止された。

サールは教育者としても多くの後進を育て、画家ケリー・ジェームズ・マーシャルをはじめ、多くのブラック・アーティストに影響を与えた。

1975年にはホイットニー美術館で個展を開催したものの、その後数十年にわたり、大規模な美術館で作品が紹介される機会は決して多くなかった。しかし2019年には、ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)とニューヨーク近代美術館(MoMA)が同時期に個展を開催し、その功績を改めて世界に示した。

2026年春には、アメリカ芸術文学アカデミーの会員にも選出されている。

2023年公開のドキュメンタリー映画『Betye Saar: Ready to Be A Warrior』を監督・制作したアンジェラ・ロビンソン・ウィザースプーンは、「彼女は創作への尽きることのないエネルギーを持っていました。白人男性中心だったアート界に対して、彼女には伝えるべきことが数多くあったのです」と語る。同作にはジョン・レジェンドやティナ・ノウルズらも出演している。

さらにウィザースプーンは、「幼い3人の娘を育てながら、公民権運動にも参加したいという強い意志を持っていました」と、その人物像を振り返った。

現在ロサンゼルスのRoberts Projectsでは、衣装デザインに焦点を当てた展覧会「Let’s Get It On: The Wearable Art of Betye Saar」を開催中。また、マンハッタンのNew-York Historical Societyでは、最終的に100体となる予定の人形シリーズのうち26体が展示されている。

Gina Ferazzi / Los Angeles Times via AP


By COREY WILLIAMS Associated Press
Associated Press writer Anna Furman contributed reporting from Los Angeles.