中東、アフリカで深刻な小麦不足の懸念 ロシア・ウクライナに大きく依存

ロシア・トビリスカヤの小麦畑(2021年7月21日)|Vitaly Timkiv / AP Photo

 ロシアとウクライナの戦争で、食糧危機が訪れるのではないかという見方がある。とくに小麦に関しては、世界一の輸出国のロシアが西側の制裁を受け、輸出に制限がかかる可能性がある。一方、世界5位の輸出国のウクライナは戦闘地となっており生産、輸出ができない。小麦の価格は高騰しており、今後中東や北アフリカを中心に、深刻な供給不足が予想されている。

◆戦闘激化 ウクライナ産に頼れず
 戦争が与える影響として、天然ガスや石油の供給不足によるエネルギー危機が心配されているが、食糧不足はそれより深刻化する可能性がある。とくに、中東や北アフリカではロシアとウクライナの小麦に大きく依存している国があり、サプライチェーンの混乱が心配される。

 BBCによれば、黒海経由で輸送ができることから、ウクライナの小麦は中東や北アフリカに多く輸出されてきた。しかし戦闘の激化により、現在港から輸出船を出すことができない。さらに自国民への供給分を確保するため、ウクライナ政府は小麦やほかの穀類の輸出を禁止すると発表している(AP)。

 ドイチェ・ヴェレ(DW)によれば、ウクライナの小麦の生産は南東部に集中しており、現在の戦闘地域の一部と重なっている。BBCはすでに農家がロシア軍と戦うため耕作を放棄した地域も出ていると報じており、今年は輸出できるほどの栽培・収穫は期待できそうにない。

Text by 山川 真智子