ビットコイン決済はどのように行われるのか? ある中古車売買での例

Steve Helber / AP Photo

 タグ・ホイヤーの時計や、クロスカントリー飛行、さらにサブウェイのミートボール・マリナーラサンドイッチさえもビットコインで支払うことができる。いったいどのような仕組みなのだろうか。

 現金やクレジットカードの支払いに比べて、ビットコインその他の仮想通貨による支払いはまだそれほど多く見られない。多くのビットコイン保有者は、仮想通貨を日々の支払いに使用する通貨ではなく、むしろ投資用の通貨だとみなしている。

 複雑なからくりによって、価格が大きく乱高下することで悪名高いこの仮想通貨は、初心者にとっては近づき難い。手数料とは? 税金はかかるのだろうか? 前菜を注文してから会計までの間に劇的に価値が下がる可能性のある通貨をどのように使えばよいのだろうか?

                                                                                                                 

 ビットコインによる支払いはスマートフォンをタッチするだけで簡単かもしれないが、いくらか注意が必要だ。ニューヨークの中古車販売店からバージニアの顧客へ2017年のスバルの自動車をビットコインで取引した事例を見てみよう。

◆ビットコインを使用した商取引
 ユージーン・ルービンチュクが仮想通貨に参入したのは、匿名で取引をするためでも、中央銀行に対抗するためでもない。単純にビジネスの機会を広げるためであった。

 ルービンチュクと、「ロシア人のマイク」として知られる彼の父親は、彼らの営むマイケルズ・オート・プラザのCMで地元のTVに出演しており、奇妙な帽子をかぶり、誇張した動作で笑いを誘っていた。仮想通貨の採用は新しい競争力の一つにすぎなかった。

「これは、私たちが普段接触することのできない顧客、普段はうちの店のことを考えもしない顧客にアクセスするための方法の一つなんです」と彼は語った。

 アルバニー近郊の駐車場に並ぶ車やトラックには、価格が米ドルで設定されている。ルービンチュクは、単純にサービスの一環としてビットコイン保有者が訪れた場合に仮想通貨での支払いを受け付けることにした。

◆仮想通貨の現金化
 ジョナサン・サイパートは早期にビットコインに参入し、これまでのところ成功している。

 2011年に、誕生から2年の通貨の価値が高騰しているという記事を読んで、彼はすぐにビットコインを「採掘(マイニング)」するためのコンピュータに2,000米ドルを投資し、1年半かけて採掘を行った。ビットコインの採掘とは、ブロックチェーンと呼ばれるビットコインの公開出納簿上で認証を行い、テクノロジーに精通した参加者が報酬を得る複雑なプロセスである。

 採掘を始めた当時は、1ビットコインはおよそ2.5米ドルであった。彼が中古の、燃費の悪いスバルを妻のために購入する準備ができた頃には、1ビットコインは14,000米ドル以上の価値に高騰していた。

 32歳でバージニア在住のジョナサンは、彼の持っているビットコインを退役後の糊口をしのぐための貯金とみなしている。(詐欺師を警戒して、サイパートは出身地と所属する軍の支部を公開しないよう依頼した。)この投資により、彼は現金のうちほんの一部を使って何倍もの利益を得る機会を得た。

「今では、なぜビットコインをしないの? という気持ちです」とサイパートは語った。「私はその利益の一部をどうせなら商品に換えようと思いました」

◆ビットコインにまつわる交渉
 ルービンチュクとサイパートは1月2日の晩に電話で話し、スバル WRX STIの売価を34,640米ドルとすることで合意した。

 彼らは、その時点での為替レートでその価格が何ビットコインに相当するか合意する必要があった。画面上でビットコインの価格を追いながら、両者は1ビットコインがおよそ14,755米ドルに相当するとして手続を進めることで同意した。サイパートは彼の仮想通貨の口座から、ルービンチュクの口座の公開アドレスへ2.34790481ビットコインを送金した。

 サイパートはあわせて、採掘(マイニング)報酬とシステム稼働のためのネットワーク手数料として3.50米ドルを支払った。

 そして、ルービンチュクは彼の仮想通貨を米ドルに換金するため、ビットコインの価格が上下するのを見守った。

◆ブロックチェーン哀歌
 ビットコインの米ドルに対する価値が急落するといけないので、ルービンチュクは早いうちにビットコインを換金したがっていた。ビットコインの価値はわずか30分ばかりの間に400米ドルも上下することがあるため、ルービンチュクの心配も無理からぬことだった。

 しかしビットコインの仕組み上では、米ドルに換金するためにネットワーク上で複数の認証を受けなければならなかった。ネットワークの混雑など様々な要素により認証のプロセスが影響を受ける可能性があったため、30分から45分は待たなければならなかったとルービンチュクは振り返る。

「私ははらはらして、換金できるか5分おきにチェックしていましたよ」と彼は言った。

 ルービンチュクは、その晩の販売契約時の価格からわずかに低い価格で売上を米ドルに換金することができた。換金額は売上額より7米ドルほど下回った。

 換金された米ドルは、彼の事業用の銀行口座に48時間以内に入金された。

 ルービンチュクはその後すぐ、全ての取引で1%の手数料を徴収する代わりに短期的なレートの変動の影響を受けない別のプロバイダを通じて、別の商用口座を開設した。彼は販売業者が2〜3%の手数料を支払わなければならないクレジットカード決済と比べると、その手数料は得だと考えている。

◆法律上の問題
 仮想通貨は、資金を匿名で移動できるため犯罪に悪用されやすいとして知られている。一方、ルービンチュクは税務署の職員に彼の取引を報告した。

 10,000米ドル以上の現金の支払いに関する通常の報告と同様、ルービンチュクは受領した金額、受領元、そしてその支払いが「ビットコインにより」行われた旨を米国税庁に報告した。

 サイパートは軍人に関する連邦法に基づき、公式の居住地をアラスカ州として州税の支払いを行わなかった。

 しかしサイパートは長期資本利得について税金を支払わなければならないだろう。

◆刻々変化するビットコイン市場
 ビットコインの採掘(マイニング)手数料は近年大幅に下落し、支持者たちによると、ネットワークが混雑する問題は新しい技術によって解決に向かうということだ。ルービンチュクがビットコインを利用した二度目の支払いで2016年式のヒュンダイ・エラントラを販売した時は、米ドルに換金するのに15分ほど待ち時間が必要だった。

 そして最近、オレゴン州のヒルズボロに住むジェフ・ハンズリクが288米ドルでマリファナ栽培キットを購入した際は、決済完了までわずか数分しかかからなかった。彼は携帯電話から販売会社のタブレットのコードを読み込み、0.03305451ビットコインを送金した。同じ携帯電話のアプリから、ハンズリクは手数料として25セントほど支払った。

「いったんこの技術を理解し、使い始めてしまうと、将来にわたって使い続けるほかなくなるのです」とハンズリクは語った。

 マサチューセッツ工科大学の暗号経済学研究所の創設者であるクリスチャン・カタリーニ氏によると、ビットコインのネットワークは、現時点ではまだ日常的な小規模の決済には適していない。

「ビットコインでコーヒー代の支払いをしたいと思っても、今の時点ではあまり良い考えではないでしょう」と彼は言う。「しかし時代は変化するものです」

By MICHAEL HILL, Associated Press
Translated by Y.Ishida

Text by AP

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