仮想通貨 誇大宣伝の裏にある社会変革への理念

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著:Rick Washミシガン州立大学、Associate Professor of Information Science and Cybersecurity)

 ブロックチェーンやNFT(非代替性トークン)、ビットコインなどの仮想通貨の広告をいたるところで目にする。銀行に代わるもの芸術作品を購入する新たな手法次に来る大きな投資機会、そしてメタバース(仮想空間)の根幹をなすものとして、暗号技術への取り組みが促進されている。

 多くの人々にとって、このようなテクノロジーは理解しづらく、リスクをともなう。しかし、熱狂的な支持者たちは夢中になって推進をはかっている

 サイバーセキュリティやソーシャルメディアを専門に研究する私は、このような誇大宣伝の裏に、社会変革に対する独自の理念があることに気づいた。筋金入りの信奉者は、人々は仮想通貨を通じて、そもそも信用に値しない政府よりもテクノロジーを信用するようになると主張する。この理念に押されると、仮想通貨のリスクに目を向けないまま取引をすることになる。

◆真の信奉者
 私たち研究チームは3ヶ月弱の間、ソーシャルニュースサイト『レディット』の掲示板上で仮想通貨についての調査を行い、ユーザーがビットコインや仮想通貨についてどのような意見を交わしているのか情報収集を試みた。掲示板上で最も大きな存在感を示していたのは、「真のビットコイナー」と自称する仮想通貨を熱狂的に支持するグループだ。「真のビットコイナー」はテクノロジーの支持者や仮想通貨取引業者とは異なり、暗号技術や仮想通貨の取引実績についての話はしない。その代わりに、信用や腐敗行為についての議論が交わされていた。

 仮想通貨の支持者たちは、政府の腐敗や企業による不正行為についての持論を引き合いに出すことが多い。社会は規制を定め、施行する政府や企業に依存していると認識しており、人々はこのような「間違いだらけの」機構から抜け出せないと不満を訴える。腐敗行為とは人間誰しもがもつ弱さに起因し、他人を支配し虐げる要因にもなると述べる。

 熱心な支持者たちは、ビットコインやブロックチェーンなどの暗号技術によって腐敗行為が解消されると考えている。これらの新しい技術には「管理者の存在がなく」、既存の機構に依存していないと論じる。銀行による認証や政府が発行した通貨を使うことなく、ビットコインであらゆるものの売買が可能である。

 政府は腐敗しており、その腐敗は仮想通貨により阻止できるという考え方は、調査対象となった仮想通貨の支持者の間で共通している。一方で、さらに熱狂的な支持者は変化を目指し、権力を保持するのは誰なのか、権力の所在を変えたいと願っている。

 支持者の間では、仮想通貨こそがこのような変化を実現するものであると、議論が交わされていた。熱心な支持者にとって、仮想通貨の取引は単にものを売買するための手段ではなく、暗号技術を活用することで社会は政府や企業への依存から抜け出すことができると主張する。つまり、仮想通貨の取引によって、しかもできるだけ多くの人々ができるだけ多くの仮想通貨を運用することで世界に変化がもたらされ、政府から権力を取り除くことが可能になるという。

◆理念を後押しすること
 このような社会における権力の所在についての固定概念により、支持者たちの理念は具体化する。仮想通貨をめぐる理念のなかで重要なことは、人々が仮想通貨の取引を行わない限り、社会変革は起こり得ないという点だ。テクノロジーと理念は表裏一体をなす。

 熱狂的な支持者は多くの場合、仮想通貨を人に勧めていても、それはテクノロジーを推奨していることを意味しない。彼らにとって、仮想通貨の売買は、政治的、社会的活動の一環なのだ。仮想通貨を購入することで腐敗がなくなり、社会は政府よりもテクノロジーを信頼するようになると主張する。
 
 この理念はテクノ・リバタリアニズム(テクノ自由主義)の最たる例であり、政府をテクノロジーで置き換えることを目指している。テクノ自由主義者のような真のビットコイナーは、テクノロジーこそが社会を統制するべきだと考える。とはいえ、市民が自由を獲得することよりも、金融経済を支配することに重点が置かれている。仮想通貨の推進がこの理念の一環であることから、仮想通貨は宗教と比較されることも多い。

◆仮想通貨の危険性
 とりわけイデオロギーというものは、一部の危険性を強調し、それ以外は重く受け止めないという性質がある。真のビットコイナーは、政府の腐敗問題を強調するが、仮想通貨につきものの金融リスクについては過少評価している。ビットコインの価格は乱高下することが特徴であり、これまで多くの人が仮想通貨を購入し、資産を失ってきた仮想通貨ウォレットは理解するのも使用するのも複雑であり、詐欺にあっても取引を無効にすることは難しい

 仮想通貨の熱狂的な支持者は、その技術が人々社会におよぼすリスクについて過小評価することが多い。さらに、人々の財産を保護し、銀行口座に対して保険を提供し、また盗難にあった資金を返却するというような、政府や企業が果たす重要な役割について理解しようとしない。

 仮想通貨がもつ特性により社会変革が生み出されるという信念もまた誇張されたものだ。暗号技術は、企業を排除する必要も、政府による統制を避ける必要もない。企業内で管理される非公開のブロックチェーンもあれば、仮想通貨に関連する政府による法規制も多くある。暗号技術を単に利用する限りにおいては、熱狂的な支持者たちが目指すような社会変革にはなかなかつながらないと考察する。

This article was originally published on The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
Translated by Mana Ishizuki

The Conversation

Text by The Conversation