仮想通貨にとって重大な一年だった2021年 今年はどんな年になるのか

Tarasenko Andrey / Shutterstock.com

著:Erica Pimentelクィーンズ大学、Assistant Professor, Smith School of Business)、Bertrand Malschクィーンズ大学、Associate Professor of Accounting, Smith School of Business)、Nathaniel Lohクィーンズ大学、Junior Fellow of the CPA Ontario Centre for Corporate Reporting and Professionalism) 

 2021年、仮想通貨はあらゆる面において画期的な進歩を遂げた。

 まず、非代替性トークン(NFT)などの仮想アプリケーションが新たに市場を伸ばした。これらのデジタル資産は一流オークションハウスにおいて記録的な高額で落札され、勢いを得た。そして、仮想通貨による決済を導入しているエクスペディアやマイクロソフトなどの大手ウェブサービス企業に牽引され、ビットコインでの決済が広く一般に普及しはじめた。2021年9月には、世界で初めてエルサルバドルにおいて、ビットコインが法定通貨として採用された。

 2021年の一年間で、仮想通貨市場がどれほど拡大したかを示す事例はほかにも多くある。仮想通貨をめぐる動きが活発化するなか、2022年はどのような年になるだろうか。

 この一年を通して、仮想通貨はおもに次の3点に関連して勢いを増すと考える。ビットコインによる決済の普及拡大、規則や監視体制の強化、そしてNFT市場の活性化である。

◆ビットコインの導入
 個人顧客がビットコインを購入する際の動機について、研究者による解明はなかなか進んでこなかった。最近の研究では、消費者を引き付けるおもな要素としてシステムの信頼性、オンライン上の口コミ、取引を行うプラットフォームのサービス品質、認識されている投資リスク、そしてビットコイン運用実績への期待の5点が示されている。

 さらに、ジェンダー年齢、教育水準も同様に重要な要素であるとの考察から、この論拠に新たな意義を付加した研究も複数ある。

 仮想空間をめぐる状況により、ビットコインが近い将来に主流となる可能性がますます高められている。

 まず、ツイッターやレディットなどのオンラインコミュニティでの活動が増加していることが挙げられる。そこでは仮想世界における初心者であっても、経験豊富な投資家と情報交換を行い、価格予想や売買戦略について口コミやアドバイスを得ることが可能だ。

 次に、法定通貨を仮想通貨へ両替するための取引プラットフォームである、仮想通貨取引所が急増している状況がある。一方で既存の取引所に関しては、技術インフラへの大規模な投資が行われている。インフラの整備が進むことで、仮想通貨市場へのアクセスが拡大し、機関投資家の関心が集まる。

◆組織的な関与、規制による監視体制
 2021年は、欧州連合の融資機関である欧州投資銀行(EIB)をはじめ、機関投資家が仮想通貨に関する見解を表明した年でもある。

 4月、EIBはイーサリウムのブロックチェーンを利用して1億ユーロ相当のデジタル債権を発行し、ゴールドマン・サックス、サンタンデール銀行、ソシエテ・ジェネラルが主幹事としてそこに参加した。調査結果では、機関投資家による市場への参入が契機となり、仮想通貨が広く受け入れられるようになったことが示された。私たちもすぐに順応することになるだろう。

 つまるところ、ビットコインを決済方法として受け入れる販売拠点の増加と、機関投資家による市場への投資が活性化されたことで、2022年にはビットコインは支払い方法のひとつとして定着すると考える。

 フィンテック業界では、分散型金融(DeFi)が仮想通貨に次ぐ最先端システムとして広く注目されている。DeFiは分散型台帳技術をベースに分散型システムを構築し、P2P(ピア・ツー・ピア)による融資を促進したり、ステーブルコインなどの有価証券を新しく作成したり、また、新たなコーポレートガバナンスの在り方を示したりする。

 規制当局からの関心も高まりつつあるようだ。EU圏内の政治的優先事項を決定する主要機関である欧州理事会は2021年11月、包括的な仮想通貨規制案(MiCA)についての見解を発表し、デジタル資産やDeFiに対して確固とした規制システムを提供することを提案した。

 同じ11月、アメリカでは連邦準備理事会と連邦預金保険公社、通貨監督庁が共同声明を出し、仮想通貨に関する一連の政策指針を策定すると発表した。

 規制の不備が仮想通貨の普及を阻止する大きな要因になり得ることは、研究者によって指摘されてきた。政府による厳格な管理体制と、公式デジタル通貨の導入を検討する各国の動きが相まって、2022年は規制強化が進む年になりそうだ。

◆活発化するNFTをめぐる動き
 NFTの新たな波が2021年に到来した。NFTは、デジタルアート作品などの所有権を証明する手段として用いられる。その手法は、たとえば、フィンセント・ファン・ゴッホの絵画作品の所有権を実物のキャンバスを用いて証明するのと同じである。

 NFTは本来、デジタルアート作品の所有権を正式に示すための手段であったが、市場の高まりを受け、デジタル不動産をはじめとするあらゆる種類のデジタル資産を取引の対象に加えた。

 NFTの売上高は過去最高を更新している。最近では、オークションハウスのサザビーズにおいて1710万ドルの値を付けた。その結果サザビーズは、デジタル作品の売買に特化したNFT専用のマーケットプレイスであるメタバースを開設した。

 NFTプラットフォームの急増にともない、NFT市場は2022年も成長を続けるだろう。

◆購入者の警戒心
 このように、投資を行うための好機を得てはいるものの、仮想通貨の投資家に対し、オンラインコミュニティで目にする宣伝文句には懐疑的でいることを強く求める。仮想通貨に熱中している人は最低限、投資する前には適正な評価を行うべきである。

 2022年には、新たな詐欺や陰謀も間違いなく増加するだろう。例を挙げると、ネットフリックスの人気番組に便乗して発行された仮想通貨「イカゲーム(Squid Game)」は詐欺であった。また、バンクシーの偽NFTアート作品が24万4000英ポンドで販売された。

 個人投資家の行動に関する研究では、「逃すことへの不安」に取りつかれる人が一定数いることが示されている。

 それゆえに、次に人気を博す仮想通貨についてヘアスタイリストや親友のいとこなどからの内密な話を退けることは、難しいかもしれない。しかしながら、仮想通貨への投資に慎重に関わりたいのであれば、金融市場に関連する技術や基本についての知識を蓄えることも必要である。

 結局のところ、仮想通貨は投機的なものであり、万人受けするものではないのだ。

This article was originally published on The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
Translated by Conyac

The Conversation

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