「ビットコイン都市」建設へ、エルサルバドル 「ビットコイン債」で資金調達

Salvador Melendez / AP Photo

 ロックコンサートのような賑やかな雰囲気のなか、エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は、火山のふもとの海辺に「ビットコインシティー」を建設すると発表した。

 ブケレ氏は11月20日夜、ビットコイン愛好家の集まりで自身の考え方を披露した。かつてはマイアミで開かれたビットコイン・カンファレンスで、エルサルバドルが暗号資産(仮想通貨)を法定通貨として採用する世界初の国になることをビデオメッセージで表明していた。

 野球帽を後ろ向きにかぶる姿がおなじみの大統領は「2022年にビットコイン債を発行する」とも発言した。資金を確保して2ヶ月もすれば、建設工事が始まるとみられる。

 ビットコインシティーは南東部フォンセカ湾に面したコンチャグア火山の近くに建設され、その地熱発電を利用して都市全体とビットコインのマイニング(通貨取引を検証するために日夜行う複雑な数学計算)に電力を供給することになる。

 政府はすでにテカパ火山近隣にある別の地熱発電所において、ビットコインのマイニングを試験的に行っている。土地やインフラを提供するほか、投資家を誘致する役割は政府が担う。

 ビットコインシティーでは付加価値税(VAT)のみが課され、税収の半分は地方債の利払いに、残りは都市インフラや維持管理に用いられる。大統領によると、ここには固定資産税、所得税、住民税がないほか、CO2排出量もゼロになるという。

 外資の誘致を視野に入れた都市建設が行われることになるだろう。大統領は住宅地、ショッピングモール、レストラン、港湾などを建設するとしているほか、デジタル教育、テクノロジー、持続可能な公共交通機関についても言及した。

 エルサルバドルで開催された「ラテンアメリカ・ビットコイン&ブロックチェーン・カンファレンス」のクロージングでブケレ大統領は「ここに投資して、好きなだけ儲けよう」と歓声をあげる観衆に対し英語で呼びかけた。

 エルサルバトルでは、9月7日からビットコインが米ドルと並ぶ法定通貨となっている。政府は1億5000万ドル(約170億円)のファンドを立ち上げ、ビットコインに投資して下支えしている。国民のビットコイン利用を促進するために、デジタルウォレットの利用者に30ドル(約3400円)相当のビットコインを提供することにした。

 この政策には批判の声もあがっており、ビットコインの透明性が低いために国内に犯罪を呼び込む恐れがあるほか、デジタル通貨の価値が大きく変動することで保有者がリスクを負う可能性があるという指摘がある。

 ビットコインは元々、政府が管理する金融システムの枠外で使用するために作られたものであるため、ブケレ氏はこれで外国からの投資を呼び込み、エルサルバドルの外国居住者が家族に送金する際の費用を安くできるとしている。

 ブケレ氏が権力掌握に向けた動きをみせるなか、今年に入って野党や外部の観察者からは懸念の声が広がっている。

 2月に行われた選挙の結果、人気の高い大統領の与党が議会の過半数を制した。新たに選出された議員を迎えた議会において、憲法で定められた最高裁判事と検事総長を即座にすげ替えたほか、ブケレ氏の与党がほかの政府機関を確実に掌握できるようになった。
 
 これを受けてアメリカ政府は、援助対象を政府機関から市民社会団体に変更すると発表した。ブケレ大統領は今月、外国から資金提供を受けている組織に対し、外国代理人として登録するよう義務付ける法案を議会に提出した。

By DAVID BARRAZA Associated Press
Translated by Conyac

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