あなたの死後、暗号資産を愛する人に渡すためにしておくべきこと

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 暗号通貨への投資を始めたばかりの人には、それが財産管理の委託弁護士に相談するほどの価値があるものだとは想像しにくいかもしれない。しかし、気軽に始めた暗号通貨への100ドルの投資が一夜のうちに高騰し、全投資額のなかでも大きな割合を占めるようになることも、ありえない話ではない。こんなことを言うのも恐縮だが、あなたもいつかは死ぬ。したがって、自分の死後に備えて暗号資産の相続計画を立てておく方がよい。

 暗号資産は、従来の投資資産とは異なる。まずもって、セキュリティリスクに対して従来資産よりも脆弱であり、一般的には、受取人を指名することもできない。たとえばあなたが自宅の物理デバイスに暗号資産を保管しており、数人の友人がそのキー(暗号通貨ウォレットへのアクセスを許可するパスワードなど)を知っている場合には、そのうちの誰かがあなたの家に上がりこんで、暗号資産を盗めてしまう。曽祖母が残したダイヤモンドのイヤリングを持ち去るのと同じくらい、簡単にできてしまうのだ。逆に、もし仮にあなたが誰ともキーを共有していなかった場合には、その暗号資産は永久に失われてしまう。

 したがって、ほかの貴重な資産と同様に暗号資産を安全に保管し、愛する人たちにあなたの意思を伝えておくことが重要だ。

◆暗号資産の保管方法を知る
 取引された暗号通貨はウォレット(財布)に保管される。もちろんそれは、革製のウォレットなどではない。暗号通貨ウォレットは、アプリやウェブサイトでデジタル管理することもでき、サムドライブなどで物理的に管理することも選べる。そこでの選択は、暗号通貨で何をしたいかの目的に左右される。

「ホットウォレット」は、暗号通貨の取引と購入に使用され、常に資金が出入りする当座預金口座のようなものである。基本的に無料で利便性が高いことが利点だが、欠点は常時インターネットに接続されているため、セキュリティに不安があることだ。

 一方で「コールドウォレット」は、暗号通貨を冷凍庫で保管するようなものだ。より長期にわたって資金を預ける普通預金口座のようなイメージであり、ホットウォレット、コールドウォレットの両方を同時に持つことも可能だ。

 専用のキーを持つ者ならば、つまりランダム生成された数字と文字から成るパスワードを所持している者であれば、誰でも暗号通貨にアクセスできる。暗号資産の所有者だけがそのキーを持つことも可能だが、サードパーティーの暗号通貨取引所がキーを保管する場合もあり、その二つを合わせたハイブリッド方式もある。

 バージニア州リッチモンドにあるジェームズリバー法律事務所の創設者であり、代表弁護士のアレックス・メヒアス氏は、「サードパーティーの取引所に長期保管する場合には、仮に失われても構わない金額にとどめるべきです。そこではあなたはキーを管理できません。資金が凍結されたり、攻撃を受けたりするリスクがあります」と話す。同氏は、暗号資産の価値が高額であればあるほど、所有者本人での保管、ないしは所有者と取引所で共同保管するオプションを推奨している。

◆暗号資産のセキュリティ確保とアクセスのしやすさの両立を
 コールドウォレットの一例としては、うっかり失くしそうなほど小型サイズの物理ストレージデバイスがある。コールドウォレットにはアクセス用のPINコードが必要で、それに加えて、キーを紛失した際のバックアップとしてリカバリーフレーズを設定する。メヒアス氏によると、コールドウォレットを保管するには、自宅用の耐火金庫や銀行の貸金庫を使うべきだという。ただし、キー、PINコード、リカバリーフレーズを書き留めたメモは、コールドウォレットと同じ場所に保管してはならない。なぜなら、もし仮に誰かがそれらのアイテムをすべて一度に見つけた場合、簡単に仮想通貨を盗めてしまうからだ。

 何よりも重要なのは、無理のない保管方法を設計することだ。メヒアス氏は、「用心するあまり、自分でも覚えられないような複雑なシステムを作ることは避けてください」と言う。同氏はこれまでに、キーを書き留めた紙を三分割し、それぞれの紙を別々の場所に隠した人の話を聞いたことがあるという。メヒアス氏は、「一見すると良いアイデアのようにも聞こえますが、これはひどく間違ったアイデアです。どれかひとつでも失うと、暗号資産は永遠に失われてしまいます。つまり、紛失リスクが3倍になるのです」と忠告する。

◆愛する人のために、詳細な相続計画を作成しておく
 自身の遺言書の中に受取人の名前を明記した上で、相続計画の中に暗号資産の一覧とすべてのパスワード、PINコード、キー、それからコールドウォレットのありかを知らせる指示書を追加することだ。あなたが暗号通貨取引所のアカウントを持っている場合、それを引き継ぐ受取人は取引所のカスタマーサポートに連絡し、死亡した事実を通知することができる。

 大手の仮想通貨取引所・コインベースの担当者によると、コインベースのアナリストによる個別サポートを含め、暗号資産を相続する近親者をガイドするプロセスが同社にはすでにあるという。また、仮想通貨取引所のジェミニでは、死亡した人の口座から資金を引き出すためには死亡証明書と委任状が必要となる。ジェミニの担当者は、「当社は将来的にこのプロセスを簡素化したいと考えており、アカウントの受取人を登録する機能を当社のプラットフォームに追加する方向で取り組んでいます」とメールで回答している。

◆相続計画とウォレットをアップデートする
 あなたの資産が意図した通りの人の手に渡るよう、しっかりと準備しよう。結婚や離婚などといった人生の節目ごとに、資産相続計画をアップデートすることが重要だ。指示書の内容をアップデートして、受取人があなたの資産にアクセスできるようにしよう。コールドウォレットもまた、ファームウェアの定期アップデートという形でメンテナンスしておく必要がある。これによって、愛する人の負担を軽減し、彼らがあなたの死後に財産処理をめぐる争いに巻き込まれるのを防ぐことができる。

 メヒアス氏は、「暗号通貨の価格は短期間で激しく急騰する可能性があり、いまから5年後や10年後には驚くほど高額になっているかもしれません。仮想通貨のポテンシャルはきわめて大きいと言えます」と語る。

By SARA RATHNER of NerdWallet
Translated by Conyac

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Text by AP