上昇する柴犬コイン、仮想通貨のトップ「犬」の座をうかがう

Richard Drew / AP Photo

 暗号資産が正式に犬となる。

 最近、ミームコインやジョークコインと呼ばれているデジタルトークン「柴犬コイン(SHIB)」の取引が過熱している。犬をテーマとするこの暗号資産の時価総額は400億ドル(約4.6兆円)を超えてデジタル資産のトップ10に入ったほか、同類のコインで柴犬コインを触発したとされるドージコイン(DOGE)の価値を上回った。

 柴犬コインは11月1日の昼頃に10%値上がりし、1週間で価格が倍になった。値上がりの多くは10月27日の活発な取引によるもので、その日は66%も上昇した。

 急激に上昇しているとはいえ(最近1ヶ月で約900%)、1柴犬コインの価格は1セントにも満たない。9月下旬に1000ドル相当の柴犬コインを購入していれば、2000万コインの価値はいま約9000ドルになっている。

 柴犬コインはほかの多くの暗号資産と同様に商取引に使用されることは通常なく、暗号資産市場で広くみられるように変動が大きいため、多くの専門家や投資家はこのコインをリスクの高い投機的な投資対象とみている。管理主体が明確でなく、機能的な使いやすさがほとんどない商品への投資は慎重であるべきだと、専門家は警鐘を鳴らしている。

 デューク大学ロースクールでフィンテックと暗号資産を研究しており、同資産に対して懐疑的な見解を主張しているリー・ライナース氏は、「柴犬コインの最近の高騰に驚きはない。本質的な価値を持たない資産に大規模な投機がなされるとき、よくみられる現象だ」と話す。

 投資家であれば、よくある話だと思うかもしれない。ビットコイン(BTC)は今年に入って2回も倍々ゲームとなり(その間に一時的な急落もあった)、現在では6万ドルを超える水準で取引されている。株式市場ではゲームストップが柴犬コインに匹敵する値上がりをみせており、1月上旬の約17ドルから月後半には483ドルまで高騰した。最近では180ドル前後で安定的な取引がなされている。

 柴犬コインはもっとも注目されている暗号資産ではあるが、一般的な取引所ではいまのところ売買できない。オンライン署名サイト『Change.org』では、モバイル取引アプリ「ロビンフッド」で柴犬コインを扱えるよう求める嘆願に45万人以上の支持が集まった。ロビンフッドでは現在、ドージコインやそのほか暗号資産の取引が可能となっている。同社CEOのブラッド・テネブ氏は投資家に対し、「顧客にとって安全で、規制の要件を満たす形で新たなコインを取引対象に追加できるか慎重に検討していく」と述べている。

 暗号資産市場の規制強化は避けられないとみられているが、その時期は見通せない。米証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長は8月、暗号資産業界の投資家保護は十分でないとした上で、同市場をワイルドウエスト(西部開拓時代の無法地帯)にたとえた。

 不十分な規制によって、柴犬コインやそのほかのデジタル資産が高騰しているという因果関係は明らかでない。ただ、個人投資家、つまり一般の人々が市場をリードしているようだ。
 
 ブロックチェーンのデータ分析企業コイン・メトリクスでリサーチアナリストを務めるカイル・ウォーターズ氏によると、柴犬コインの取引が過熱した10月27日、取引サイズの中央値は115ドルだった。暗号資産取引所コインベースで柴犬コインの取引をしている人が小口トレーダーであったことが「強く示唆されている」という。

 柴犬コインの上昇は、春にみられたドージコインの高騰とよく似ている(4月7日からの1ヶ月で約5セントから57セントに上昇)。

 ほかの多くの暗号資産と同様に、柴犬コインも謎めいたところがある。ホワイトペーパーによると、柴犬コインは2020年に「Ryoshi」という匿名の個人または集団によって作られた。同ペーパーには柴犬コインとその子孫の機能に関する説明のほか、コミュニティ、自由、革命、伝統的なパラダイムの破壊など、高邁だが判然としない謳い文句が散りばめられている。

 ホワイトペーパーに記載されている技術的な用語を、テクノロジーやブロックチェーン独特の用語に疎い人が解読するのは難しいだろう。

By MATT OTT AP Business Writer
Translated by Conyac

Text by AP