コロナ禍で重要性増すBCP 現状と課題

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◆米国との比較
 海外事例のなかで参考になるのはアメリカである。同国の多くの企業が米国連邦緊急事態管理庁(FEMA:Federal Emergency Management Agency)から学び、危機管理システムを作っている。

 そこで重要なのが、統合緊急事態管理システム(IEMS:Integrated Emergency Management System)である。このシステムは①危険分析②能力評価③緊急時対応計画④メンテナンス能力⑤緊急時対応策⑥復旧能力といったカテゴリーに分けて構成され、企業には取り込みやすいと思われる。

 2004~2005年時点での、米国と日本のBCP策定理由についての調査では、米国の約44%が、「過去の業務経験の中断の経験」を挙げている。ちなみに日本ではその意見は約15%になっていた。米国の企業における切実な意識がBCP策定につながっている。世界貿易センタービルにテナントで入っていたある会社は1993年の爆弾テロの後、莫大な費用をかけBCP策定を行い、その後の停電被害や雪害などによる影響を最小限に食い止め、その投資コストを数年で回収した。この例が示しているのは、BCP策定による危機管理が事業継続の軸であること。また、リスクマネージメントやセキュリティ対策への投資が決して無駄ではないことである。

◆BCPの重要性
 少なからず日本の企業が過去の災害やリスクを経験して、切実な思いで対策を講じていないことは、それだけリスクを受けていないことを示しているのだろう。しかし、日本では東日本大震災や西日本豪雨など近年連続して災害により、大きな被害が出ている。さらに現在のような新型コロナ禍である。これにより多くの小売業や観光業など倒産が相次いでいる。8万人に及ぶ関連解雇者が出ている。この深刻なダメージを克服していくためにも、新型コロナ対策を加味したBCPを起点としたリスク対策が浸透することが期待される。また、この経験を活かした危機管理体制の確立が企業には求められる。

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Text by 古本尚樹