旭川市の新型コロナウイルス感染拡大とクラスターの背景

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 新型コロナウイルスの第3波ともいうべき感染拡大の影響が大きくなっている。とくに、私が居住している札幌市や生まれ故郷である旭川市ではさらに深刻な事態となっている。地元にいる研究者としての意見を呈したい。

◆札幌市での前例から学ぶことがあった
 旭川市の高規格医療機関(大学病院など)は最北端の稚内市や利尻・礼文など離島を含め広大な地域をカバーする地域医療の要である。これら道北地域は四国4県とほぼ同等の広さになるが、それをまかなうのだから、普段から患者らからのニーズと医療・保健・福祉、そして高齢社会の進展にともなう介護などの総合的サービス供給のアンバランスのなかにある。そうしたなかで、今回の新型コロナウイルスの感染拡大はこのアンバランスさをさらに助長した。それとともに北海道の危機管理における脆弱性を露呈したと言っても過言ではない。

 2020年の春に同ウイルスが感染拡大し始めたときに、札幌の高齢者介護施設「茨戸アカシアハイツ」での事例を思い出さずにはいられない。やはりクラスター化により入所者の感染拡大、第2波で、それに伴い施設の介護職員や看護職が不足していた。このときは職員の家族も出勤に反対したり、PCR検査の受診自体がままならなかった。清掃の職員もやはり感染拡大を受けて対応できず、結果施設の介護などの職員がその清掃なども行うことで、負担と負荷が大きくなったはずだ。施設側は札幌市へ入所者の入院対応を依頼したとのことだが、間に合わず12人が亡くなり、その後入院先でも5人が亡くなった。亡くなった方とともに、施設の介護職員の負荷もその大きさと実際の勤務の過酷さ、そして自らも感染リスクを負いながらなので、その環境の深刻さは理解できよう。

 一方で、施設と札幌市など関係機関は事態の深刻さを共有できていたのか、という疑問もある。すなわち初期対応における対応の遅れは大きい。足りなくなったマンパワーの補完とそのマンパワーのメンタルなどのサポートも重要な対策だった。また、こうした介護施設は医療機関などでも、対策本部を立ち上げて対応し、かつ関係機関と協働で対応が望まれることだった。いわゆる業務継続計画(BCP)の確立とその訓練をしておく、そのうえで今回の新型コロナウイルスなどの感染症対策も盛り込む必要があるのだが、これらの部分で課題は少なくない。

Text by 古本尚樹