「アフリカの若手起業家のために」歌手エイコンが暗号通貨発行へ 注目の「アフリカ的未来」

U.S. Embassy Nairobi / flickr

 セネガル系米国人歌手のAkon(エイコン)は6月18日、世界的広告賞「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル(Cannes Lions International Festival of Creativity)」で開かれたパネルディスカッションで、独自の暗号通貨「AKoin」の発行を表明した。暗号通貨を基盤に運営される「Akon暗号都市(Akon Crypto City)」構想も視野に入れたAkonの新たな挑戦だ。

 AKoinのウェブサイトによると、そのタグラインは「暗号通貨でアフリカの若手起業家を支援(Crypto-powering Youth Entrepreneurship in Africa)」となっている。アフリカの人口の約60%を占める若者が積極的に起業に取り組むことは、アフリカの経済成長の鍵となる。アフリカの若者にも、スマートフォンやインターネットは普及し始めている一方で、「不安定な通貨、インフレ、銀行サービスの不足は、アフリカの起業家が直面するジレンマ」であると同社は指摘する。

 この通貨や金融の問題を解決するために提案されたのが仮想通貨だ。AKoinを基盤としたAKoinエコシステムでは、ブロックチェーンを使った様々なアプリを通じて、消費者は自分のスマートフォンから直接AKoinを購入し、保持・使用できるようになる。このエコシステムを活用することによって、若手起業家がそれぞれの事業をより安定的に拡大できるようにしたい、というのがAKoinの狙いだ。

                                                                                                                 

◆故郷の課題解決に取り組むAkon
 Akonはこれまでも、歌手の領域を超えた活動をしてきた。セネガル人パーカッショニスト、モル・チャム(Mor Thiam)を父に持つ彼は米国ミズーリ州生まれだが、幼少期を西アフリカのセネガルで過ごしたこともあり、自身のアフリカのルーツには思い入れが強いようだ。2014年には、他の起業家らとともに「Akon Lighting Africa」を立ち上げ、太陽光発電の導入に取り組んできた。同プロジェクトのウェブサイトなどによると、現時点でアフリカ18ヶ国に対し、少なくとも10万個の太陽光発電の街灯が展開されたとのことだ。

 AKoin発行のその先には、「Akon暗号都市」の構想がある。ICO(暗号通貨の発行による資金調達)に関するアドバイザリー会社、ICOインパクトグループの説明によると、AKoinが取引の中心となって運営される都市構想がすでに具体化されつつある。

 場所は、Akonがセネガルの大統領から譲り受けた2000エーカー(約8平方キロメートル)の土地に建設される予定だ。ここは、セネガルの首都ダカールからも近く、新国際空港からも車で5分以内の場所だという。

◆いまここにある「アフリカ的未来」――リープフロッグとアフロフューチャリズム
 アフリカ大陸は、世界の中でも、いま最も変化が激しい地域だ。それは単に経済成長率が高い国々が、他の地域に比べて多いということだけでなく、最新技術の導入によるライフスタイルや社会経済システムの変化ということでもある。こうした変化は、リープフロッグ、もしくはリープフロッグ型発展などと表現される。

 日本でも、今年5月にサムライインキュベート社が、アフリカ大陸のスタートアップへ投資・インキュベーションを目的とする株式会社リープフロッグベンチャーズを子会社として設立し、支店をアフリカ大陸のルワンダ共和国に開設することを発表した。リープフロッグベンチャーズの社名は、「新興国の発展において先進国同様の段階的な進化を踏むことなく、途中の段階を全て飛ばして最先端に到達させることを目指すという意思」を表したものだとしているが、まさに暗号通貨やブロックチェーンによってリープフロッグが起こり、アフリカの国々が急速に変化して最先端になる可能性は十分にある。

 ルワンダ発のドローンで血液を運ぶ世界初のドローン医療スタートアップ、Zipline(ジップライン)や、ケニア発のモバイル通貨M-Pesa(エムペサ)などは、すでに世界中のメディアが注目する事例となっている。

 世界的なヒットを記録しているマーベルコミックのSF映画『ブラック・パンサー』は、「ワカンダ」が技術を活用して世界の最先端を行く「仮想の」アフリカの国が舞台となっていた。この映画は、アフリカ視点で未来を考える「アフロフューチャリズム」が題材となっているが、「アフリカ的未来」はいますでにここにある。その例としての、AKoinとAkon暗号都市の展開は、引き続き注目されたい。

Text by MAKI NAKATA

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