揺らぐフランスの出生地主義? 内相がマヨット海外県で廃止を予告

マヨットの治安などに関するデモ(マルセイユ、2018年3月)|GERARD BOTTINO / Shutterstock.com

◆マヨットよりさらに貧しいコモロ
 マヨットに押しかけるコモロ人が最終目的地とするのは、フランス本土だ。フランス全体から見れば、マヨット県は経済、社会、治安、環境すべてにおいて問題を抱えているが、隣国のコモロと比べればずっと豊かな島だ。国立統計経済研究所(INSEE)によれば、2018年のコモロの国民1人あたりの国内総生産はマヨット島の7分の1に過ぎず、平均寿命もマヨットの76歳に対し、コモロは64歳だ(エクスプレス誌)。

◆憲法改正と出生地主義の廃止
 フランスの右寄りの政党らは、ダルマナン内相の発表をこぞって歓迎した。右翼政党などからは、マヨット県だけではなくフランス全土において出生地主義を廃止すべきだと主張する声も聞こえている(ル・モンド紙、2/11)。

 だがその一方で、憲法改正を必要とする「出生地主義の廃止」を危ぶむ声も上がっている。さらに、公法の専門家たちからは「共和国の価値観に合わない」「法の前の国民の平等に明らかに反する憲法違反だ」といった批判も出てきており、まだまだ先行きは不透明だ。(BFMTV、2/11)

 なお、コモロはマヨット島がフランス領に属することを今日に至るまで認めておらず、マヨット島の領有権を主張している。マヨット島に遅れてフランスの植民地となったコモロの3島は1975年に独立したが、ともにコモロ諸島を成すマヨット島だけは住民投票で過半数がフランスへの帰属を望んだため、そのままフランスの海岸県として残ったという経緯があるからだ。

Text by 冠ゆき