揺らぐフランスの出生地主義? 内相がマヨット海外県で廃止を予告

マヨットの治安などに関するデモ(マルセイユ、2018年3月)|GERARD BOTTINO / Shutterstock.com

 フランスの場合、まず、父母のどちらかがフランス人であれば、どこで生まれようと子供はフランス国籍を付与される。またフランス国内で生まれた外国籍の両親を持つ子は、父母のどちらかが、フランス国内で出生していれば、フランス国籍を付与される。それ以外の外国籍の両親を持ちフランス国内で生まれた子供でも、成人に達した時フランスに居住し、さらに11歳~18歳の間に5年以上国内に居住していれば、フランス国籍を付与される。両親の申請があれば、成人前(13歳以降)に国籍を取得することも可能だ。

 ダルマナン内相の発表通りマヨット県で出生地主義が廃止されれば、同県で外国籍の父母から生まれた子供は、フランス国籍を取得することはなくなる。

◆絶え間ない不法移民と治安の悪化
 今回のダルマナン内相の発表の背景には、悪化する一方のマヨット県の治安問題がある。マヨット海外県は、フランス本土から遠くインド洋に浮かぶ島で、コモロの主要3島とともにコモロ諸島を形成する。コモロからの距離は最も近い場所で70キロしかない。そのため、1970年代のコモロ独立以降も、コモロから不法に移住してくる人が絶えない。

 2019年にはマヨット島に住む人の3分の1をコモロ人が占めるまでになった(エクスプレス誌)。彼らは、マヨット島にフランス最大のスラム街を形成し、その影響は治安の悪化以外に医療逼迫(ひっぱく)にまで及んでいる(TF1)。

Text by 冠ゆき