トランプ氏が再び大統領になれば何が起きるのか

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◆米中関係に与える影響
 バイデン氏とトランプ氏の考え方や価値観はまるで異なるが、唯一共通しているのが対中姿勢だ。トランプ氏が再び大統領になっても米中対立は続く。だが、トランプ氏再選なら、アメリカによる先制的行動はさらに過熱する可能性が高い。バイデン氏も新疆ウイグル自治区の人権問題、先端半導体問題などで中国への経済制裁(輸出入規制など)を発動したが、トランプ政権になるとその発動回数、先制的経済制裁などがさらに加熱し、米中貿易摩擦がいっそう負のスパイラルに陥る可能性がある。

 一方、台湾問題にはウクライナ戦争以上に関与を示す可能性が高い。日本や韓国にアメリカ軍が駐留し、ハワイやグアムに主要なアメリカ軍基地があることで、長年太平洋における影響力を握ってきた。仮に今後中国が台湾をコントロールすることになれば、太平洋秩序を握ってきたアメリカは中国軍による太平洋進出に対峙することになる。それを抑えるためには台湾を防波堤として支える必要があり、ウクライナ以上に軍事的関与を示す選択肢をトランプ氏も選ぶことだろう。

 来年、どちらが大統領になるかはわからないが、トランプ再選となれば、中国やロシアの動きにも変化が生まれ、インドを盟主とするグローバルサウスとアメリカとの間にはいっそう距離が生じる可能性がある。また、欧州とアメリカとの関係にも再び亀裂が生じ、民主主義と権威主義の戦いでは、民主主義陣営に大きな打撃となることは避けられないだろう。トランプ・アメリカの誕生は世界を一層分断させるだろう。

Text by 本田英寿