半導体輸出規制、米中の間で厳しい立場の日本 大打撃の中国から報復も

Evan Vucci / AP Photo

◆米中の間で悩む日本
 これまでも米中の狭間で悩む日本について指摘されてきたが、今回日本は大きな壁に直面している。仮にアメリカの要請に従う形で対中規制に加われば、中国側は高い確率で対抗措置を取ってくるだろう。今年に入って日本が中国を対象にした新型コロナウイルスの水際対策を強化した際、中国は対抗措置として日本向けビザ発給停止という行為に打って出た。

 半導体関連の輸出規制となれば中国にとってさらに打撃が大きく、それに比例して日本向けビザ発給停止以上の措置で対抗してくることが考えられる。どのような対抗措置かは現時点でわからないが、日本はコンピューター関連の部品やノートパソコン、タブレット端末などで中国への依存度が高く、一つに中国がこういった品目の日本への輸出を規制する恐れがあるだろう。

 中国は2021年6月、外国(ここではアメリカを想定している)が中国に経済制裁などを発動した際に報復することを可能にする反外国制裁法を施行した。反外国制裁法はその「外国」による制裁に第三国も加担すればその第三国も制裁対象になると定めている。最近の半導体規制をめぐる上述の動きは、まさに反外国制裁法が描くストーリーと一致する。制裁措置を取ることが「合法」なのである。

◆半導体規制は防衛・安全保障問題
 一方、日本が日中経済の安定を重視し、バイデン政権の要請を断れば、それはそれで問題が生じる。今日、バイデン政権が求めているのは貿易規制であることは間違いないが、その核心は経済・貿易ではなく安全保障にある。安全保障面で日米の間に亀裂が生じることは日本が絶対に避けたいシナリオであり、中国はそういった亀裂を利用することで軍事的攻勢を仕掛けてくる。つまり安全保障上、日本がアメリカの対中半導体規制の要請に「ノー」を突きつけることは、拡大抑止を目指す日本がアメリカからの防衛的要請を拒否することと同じと言っても過言ではない。

Text by 本田英寿