自爆戦争となるロシアのウクライナ侵攻 プーチンは何を失ったのか

Mikhail Metzel, Sputnik, Kremlin Pool Photo via AP

◆明白になった中国とインドからの「ノー」
 こういった出来事により、これまでロシア非難を避けてきた中国やインドからもロシア離れの動きが顕著になった。9月中旬、侵攻以降初めてプーチン大統領と対面で会談した中国の習国家主席は、ウクライナ問題に話題が移ると終始無言を貫き、プーチン大統領が「中国の我々への疑念を理解している。中国の中立的な立場に感謝する」と伝えた。その後、習国家主席は11月上旬にドイツのショルツ首相と北京で首脳会談を行った際、欧州での核戦力の使用に反対するとの立場を明確にした。また、同月中旬にバイデン大統領と会談した際も、ウクライナでの核兵器使用や威嚇に反対すると表明した。

 また、インドのモディ首相は9月にウラジオストクで開催された東方経済フォーラムでプーチン大統領と会談し、「今は戦争や紛争の時代ではない」と初めてウクライナ侵攻を批判し、同月、国連総会の場でインドのジャイシャンカル外相もウクライナ侵攻によって物価高やインフレが生じたと不快感を示した。中国もインドも国益第一主義のもと、今後もロシアとは経済分野を軸に協力を継続していくだろうが、プーチン大統領のウクライナ政策については「ノー」の立場を示していると言える。

◆ウクライナ侵攻はプーチンによる自爆戦争
 以上のように見ると、プーチン大統領が自ら仕掛けた戦争は、軍事的にも政治的にも経済的にも負の遺産となって同大統領の元に返って来ただけでなく、外交的にはこれまで友好関係にあった国々からも「ノー」を突きつけられる結果となった。この戦争は我々だけでなくプーチン大統領にとっても政治的意義がないのは明白であり、まさにプーチン大統領による自爆戦争とでも表現できるだろう。

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Text by 本田英寿