3期目の習近平政権、さらに強硬な外交路線へ 狙う米国の「隙」

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◆アメリカとの戦略的競争
 そして、その最大の障害となるのがアメリカだ。バイデン大統領も中国をアメリカ主導で構築されてきた国際秩序を変更できる唯一の競争相手と位置づけ、これまで以上に中国への警戒感を強めている。

 今後、米中対立がどう展開されていくかはわからない。しかし、一つ重要な事実がある。2021年のアメリカの国内総生産(GDP)が23兆ドルだったのに対し、中国のGDPは17.7兆ドルとアメリカの8割近くにまで達しており、2033年には逆転するとも言われる。また、軍事費においては、アメリカが8010億ドルで世界シェア38%に対し、中国は推定2930億ドルで世界シェア14%となり、現時点でも西太平洋においては中国有利との指摘もある。軍事費も高い伸び率を続けており、台湾などをめぐっては今後いっそうアメリカに不利な状況が訪れようとしている。

◆アメリカの隙を突こうとする中国
 今日の戦争はハイブリッド戦であり、単に軍事力や支出額だけで決まるわけではない。そして、中国にとって有利な政治環境が時間の経過とともに訪れてようとしている。今後米中対立のなか、米中どちらが相手国へのトーンを下げる可能性があるかというと、それはアメリカだ。アメリカでは4年に1度指導者が変わる可能性があり、今後の指導者も中国に対しては基本的に厳しい姿勢を貫くだろうが、「強硬姿勢の程度」が今後ポイントになってくる。習氏が指導者の地位に君臨し続ける限り、中国の強硬姿勢は常に保たれるだろう。中国側は、アメリカの強硬姿勢が軟化する隙を常にチェックし、そういった瞬間を見計らって現状打破を狙ってくるだろう。

 習氏の3期目は、今後の長期的な米中対立を占う上で最も重要な時となる。アメリカは建国史上、幾度も戦争や競争に直面しては打ち勝ってきた。しかし、今回の相手は1776年以来最も手ごわい相手になるだろう。

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Text by 本田英寿