何が台湾有事のトリガーになるのか ウクライナ侵攻からの教訓

台湾海峡を航行するカナダ海軍のフリゲート艦「バンクーバー」(9月20日)|
Mass Communication Specialist 1st Class Donavan K. Patubo / U.S.Navy via AP

 台湾をめぐる緊張がこれまでになく高まっている。8月初めにペロシ米下院議長が訪台する前、中国外務省は「訪問すれば強力な対抗措置を取る」と米国や台湾をけん制し、習国家主席も7月下旬のバイデン大統領との電話会談で、「火遊びをすればやけどする」と強く釘を刺していた。しかし、中国のけん制にペロシ米下院議長が折れることはなく、習国家主席はメンツを潰される形になった。

 それからひと月以上経ち振り返ると、ペロシ氏の訪台は中国に台湾問題により強硬に対応する「口実」を与える結果になった。それ以降、中国軍機が中台中間線を越えたり、ドローンが台湾離島に飛来したりすることが激増している。また、中国は台湾を包囲するかのように軍事演習を行ったが、この軍事演習には2つの思惑があり、1つは訪問を許した台湾への懲罰的措置、もう1つは軍事演習を常態化させることだ。

 中国としては、「中台中間線越え」「台湾離島へのドローン飛来」「台湾を包囲するような軍事演習」を常態化させ、まさに新常態(new normal)を作ろうとしている。

◆今後は新常態が普通になる
 今後も緊張が高まる事態が発生するだろうが、今回ほどのレベルではない緊張が走った際にも、中国はこういった一歩進んだ行動を日常的に取ってくることだろう。そして中国がより強硬な手段を日常化させてくれば、偶発的衝突が発生する可能性は高まることになる。今日の台湾有事で最も恐ろしいのは、その偶発的な軍事衝突によって緊張が一気に高まり、双方が自衛の手段とする行動を繰り返すことによって事実上の戦争に発展することだ。我々はそれを強く認識する必要があるだろう。

Text by 和田大樹