「私の怒りを表現」バイデン大統領、反プーチン発言撤回せず「プーチンの考えは気にしない」

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◆「プーチンに対する怒りの表現」 撤回せず
 NBCニュースによると、バイデン大統領の発言後、アメリカ政府は「プーチン氏を即時に解任させるための呼びかけではない」と釈明。一部メディアではバイデン大統領の「失言」をホワイトハウスが撤回しようと躍起になっているというような報道がされ、日本のメディアでもこれがバイデン氏の失言であるという見方の報道が目立った。

 しかしバイデン大統領は28日、ホワイトハウスで直接メディアの質問に答え、ワルシャワでの自分の発言の真意を明確にした。CNNによると、レポーターにワルシャワでの発言の真意を聞かれたバイデン大統領は、「私がプーチンを権力の座から引き降ろすなんて誰も考えていない」「ロシアと地上戦争や核戦争をするなどということは、私が考える最後のことだ。私はこの男(プーチン氏)に対する自分の怒りを表現していただけだ」と述べ、自分の発言はアメリカの外交政策の変化ではないものの、発言は撤回する気はないことを明確にした。

 また別のレポーターに「プーチンがあなたの発言をどう考えるか、それを利用して行動をエスカレートさせることを懸念していないか」と聞かれると、「彼がどう考えるなんて私は気にしない。彼は私が何を言おうと気にせず、自分のやりたいことをやるだろう」と明言した。

 バイデン大統領の発言は率直すぎて「政治的に正しい」発言ではないかもしれない。しかしこの発言を聞いたアメリカ国民の反応は上々で、MSNBCの番組『モーニング・ジョー』で、以前保守派共和党員だった司会のジョー・スカーボロー氏はバイデン氏の返答を絶賛し、「今度はアメリカがどう考えるかプーチンが心配すべき時だ」と述べ、視聴者のコメントも「ミスター・プレジデント、ありがとう。我々はいじめっ子に萎縮すべきではない」「バイデン大統領のファンではないが、これは私が聞きたかったことだ。ありがとう」「バイデンは私を驚かせた、これは素晴らしい答えだ」などほぼすべて好意的なもので、バイデン大統領の姿勢の変化を歓迎していた。アメリカ人はやはり率直で威厳のある大統領を好むのである。

 バイデン大統領がもはや暴挙におよんだプーチン大統領の言うことを真に受ける気がないことは明白だ。ワルシャワでの発言が外交政策の変更という意味ではないとはいえ、今後アメリカのロシアに対する姿勢は、バイデン大統領の意見に沿って強気に変わっていく可能性がある。

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Text by 川島 実佳