危機感募らせる台湾、自衛隊・米軍への期待が低下 ウクライナ情勢で

台湾・新竹県の軍事訓練センターにて訓練を受ける新兵(2013年4月22日)|Chiang Ying-ying / AP Photo

◆ウクライナ情勢を台湾有事に連想する台湾人
 この統計結果から何が読み取れるだろうか。まず、台湾市民はウクライナ紛争における米国の対応を注視している。これまでのところ、バイデン政権はロシアへの経済制裁、ウクライナへの軍事支援という対応を維持しているが、台湾市民は米軍が直接関与しないことに懸念を強めている。「ウクライナに米軍を派遣しないなら台湾有事の際も台湾への軍事支援や中国への経済制裁強化に留まり、結局は自分たちで対応することになる」、そういった懸念が米軍や自衛隊への信頼低下に繋がっているのだろう。とくに、ウクライナ情勢によって米軍への信頼が30%も減少していることは特記すべきことである。

 また、台湾市民のなかには、ロシアがウクライナへ侵攻したことで中国が台湾へ侵攻するハードルが下がったという考えがある。米軍のプレゼンスの差、バイデン政権の優先順位など、ウクライナの状況を直接台湾の状況に当てはめることはできないが、台湾市民にとってウクライナ情勢が自らの危機感を高める結果になっていることは間違いない。
 
◆有事によって日台関係は冷え込む?
 もう一つ上述の調査結果から注視すべきことに、台湾市民の自衛隊への期待がある。今回の調査結果では減少したが、良好な日台関係もあり、有事の際には日本が参戦すると期待する台湾市民は少なくない。しかし、日本では台湾有事における邦人退避の議論が中心で、自衛隊の参戦に関する議論は少なく、それが実現する可能性は限りなく低い。そこには日本人と台湾市民との間に大きなギャップがあり、台湾有事の際にはこの問題が大きくなり、良好な日台関係に一つの亀裂を生じさせる可能性もあるだろう。

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Text by 和田大樹