菅政権に期待できるのか? EUが自問する「日本の子供拉致」問題

Rafal Olechowski / Shutterstock.com

◆国際的な枠組みの取り決め
 これを重視し、国境を越えた子供の不法な連れ去りや留置をめぐる紛争に対応するための国際的な枠組みとして定められたのが、1980年に採択された「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」だ。同条約締結国はいまでは約100ヶ国に上る。日本はG8諸国のうちでは最も遅かったが、2014年に正式な締結国となった。

 ハーグ条約は、連れ去られることで起こりうる有害な影響から子供を守ることを目的に、「原則として元の居住国に子を迅速に返還するための国際協力の仕組みや国境を越えた親子の面会交流の実現のための協力について定めて」いる(外務省ホームページ)。

 また日本はハーグ条約締結に先立ち、1989年第44回国連総会において採択された「児童の権利に関する条約」も1994年に批准している。この「児童の権利条約」8条には、「締約国は、児童が法律によって認められた国籍、氏名及び家族関係を含むその身元関係事項について不法に干渉されることなく保持する権利を尊重することを約束する」ことが、また9条3項には「締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する」ことが明記されている。

◆日本の不履行
 つまり、もしも国際結婚をして国外に住んでいた日本人親が、外国人親の了解を得ずに子供を日本に連れ去ってしまった場合、日本はその子を元の居住国へ戻すための「すべての適当な措置をとる」立場にあることになる。

 ところが、実際には、日本はこの義務を果たしていない。少なくとも諸外国はそう見ている。たとえば、ディディエ欧州議員は、「二国間カップルの別れに際し(中略)日本の当局は必ず子供の監護を日本人親にゆだねる」(ル・ポワン誌、9/25)と、欧州議会に報告している。同誌はさらに、「外国人親に子供を訪れる権利が付与されることは決してない。ヨーロッパの裁判官による決定が下されたときも、日本の裁判所はこれを強制することがない。ひどい例としては、日本人の親の家の前に現れたヨーロッパ人の親が、警察に逮捕されたこともある」(同)現状を報道している。これは明らかに日本が批准した条約に反するというのが、ディディエ議員の訴えだ。

 フランス2テレビ局は2019年、日本人親による子供の拉致問題のドキュメンタリーを放映した。元妻が連れ去った子供に一目会いたいと、限りある予算と時間のなかで言葉の不自由な異国で奮闘し絶望する父親たちの姿は、連れ去り側の親が拒否すれば、連れ去られた側の親は、子供に近づくすべを持たないという日本の実情をよく表しており、大きな反響を呼んだ。

Text by 冠ゆき

Recommends