日本製最新鋭潜水艦「おうりゅう」、世界が「リチウムイオン電池」初搭載に注目

Hunini / Wikimedia Commons

◆爆発事故の教訓から安全性を強化
 リチウムイオン電池導入によるメリットには、海外メディアも注目している。「これまでの鉛蓄電池に比べ、約2倍の電力を蓄えることができる」(ビジネスインサイダー誌)、「充電時間の大幅短縮、放電による電気容量の低下の大幅抑制」(ナショナル・インタレスト誌)といった具合だ。

 ナショナル・インタレスト誌(電子版)は、原子力潜水艦に対するアドバンテージも挙げている。原子力潜水艦は、無制限に近い水中行動能力を持つが、通常型潜水艦が電力のみで潜航する場合よりは静粛性で劣る。また、原子炉は意図的に停止させることができない。導入する軍隊にとって最も大きな問題は、原子力潜水艦は通常型の4倍から6倍の値段だということだ。海上自衛隊のように超遠距離航海を行わない海軍には、原潜はオーバースペックだとも言えよう。

「おうりゅう」では、蓄電池そのものの性能を向上させるという別のアプローチを取ったため、AIPは廃止された。AIPシステムを用いれば低速であれば数週間にわたって浮上することなく潜航を続けられるが、補助動力装置を必要とするため船体が比較的大型化することや、揮発性の液体物質を用いることによる爆発事故などのリスクが指摘されていた。リチウムイオン電池でもスマートフォンなどで爆発・発火事故が多発するなど、安全性に問題があったが、「日本は、安全で信頼性の高い潜水艦用のリチウムイオンバッテリー開発に多額の予算を投じてきた。より強靭な隔壁、安定した原材料と自動消化器などを導入し、数々のストレス実験によって、(よりシビアに安全性が求められる軍事利用で)実用化に至ったと判断された」(ナショナル・インタレスト誌)という。「おうりゅう」用のリチウムイオン電池の開発には、GSユアサが参画した。

                                                                                                                 

◆武器輸出でリベンジのきっかけになるか
「そうりゅう型」と言えば、オーストラリア海軍への売り込み失敗のニュースが記憶に新しい。安倍政権による武器輸出三原則の見直しにより、日本製の武器の輸出が解禁されたが、なかでも豪海軍の次期主力潜水艦に「そうりゅう型」を推すプロジェクトは、日本政府や国内防衛産業が最も力を入れていた。しかし、当初はフランス、ドイツと入札を競った日本が有利とされていたものの土壇場でフランスに敗れた。

 そうりゅうが敗れた理由は性能差ではなく、日本側が武器輸出ビジネスに不慣れだったためとか、オーストラリアの国内事情が大きかったからと言われている。「おうりゅう」以降の「そうりゅう型」がライバルを性能で大きく上回るとすれば、そうした点を補って余りあるアドバンテージになるかもしれない。ディプロマット誌は、「おうりゅう」の大幅性能向上は、メーカーの「三菱重工と川崎重工の能力の向上でもある」として、今後の日本の武器輸出のリベンジのきっかけになりうるとしている。

 ビジネスインサイダー誌は、「日本は特に、尖閣諸島周辺での中国潜水艦の行動に神経を尖らせている」と、日本の潜水艦戦力の拡大と性能向上の背景に中国の海洋進出があると指摘。また、米トランプ政権の圧力で米国製武器の輸入が大幅に増え、日本の国内防衛産業が窮地に陥っている現状を踏まえ、「潜水艦は日本の重工業の最後の砦だ」とも強調している。

 民生用のリチウムイオン電池技術は、日本発で今や世界を席巻している。潜水艦のような本格的な軍事利用においても、日本発の技術を広めることができるだろうか。それは、今後の「おうりゅう」の実績しだいと言えよう。

Text by 内村 浩介

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