2022年に注目される6大デジタルトレンド

Lemonsoup14 / Shutterstock.com

著:Theo Tzanidis西スコットランド大学、Senior Lecturer in Digital Marketing)

 最近リリースされたマッキンゼーの調査によると、2021年は個人、企業、社会がただそのときを生き抜くだけでなく、未来への影響を見据えた変革の年だった。

 集団免疫の獲得、パンデミック下でのロックダウンの解除、通常の生活への回帰といった、時期尚早の期待が先走った一年でもあった。燃え尽きたZ世代の若者がTikTokやインスタグラムを使って会社を辞めてしまう「SNS大退職」非代替性トークン(NFT)の台頭、メタバースの導入といった動きのほか、宇宙に行くような億万長者は相変わらず、ビジネスやテクノロジーの分野で裕福かつ生産的な生活を送っていた。

 この2年で経験した予測不可能な環境下にあって正確な予測をするのは難しいが、今年は多くの驚きに満ちた動きがあるだろう。我々の生活に影響を与えそうな6つのデジタルトレンドをみていくことにする。

◆SNS:プライバシー、品質、アルゴリズムのさらなる調整
 主要SNSプラットフォームは、フィードにおけるプライバシーとコンテンツの品質確保に注力するようになるだろう。世間一般からの批判が最近もあったにもかかわらず、フェイスブックの会員数、売上高はともに増加しそうだ。

 プラットフォームはプライバシーとコンテンツの品質を注視しつつ、年末までにプライバシーポリシーを更新し、アルゴリズムを微調整するだろう。インパクトが強く魅力のあるコンテンツに対する需要が高いため、クリエイティブなインフルエンサーという新しい職種が急成長し、ブランディングや顧客エンゲージメントで大きな影響を与えるとみられる。

 短編動画コンテンツの人気の高まりを受け、インスタグラムとTikTokでは今年の広告支出が増加するほか、インスタグラムの成長が続き、同社の広告収入シェアが過半数を超えると予想される。カスタマーサービスやリレーションシップマネジメントなど、これまで活用されていなかったSNSマーケティングが上記のプラットフォームで早々と成功を収めるだろう。

◆メタバースへの参入:2Dから3Dウェブへ
 フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は昨年10月、「メタ」へと会社名を変更すると発表した。これは同社がメタバースの変革を視野に入れていることを示唆している。メタバースは仮想現実(VR)や拡張現実(AR)が持つ可能性を表しており、VRヘッドセットやARグラス、スマートフォンアプリなどでアクセスできるバーチャルな共有スペースと呼ぶ人もいる。

 ユーザーは仮想環境のなかで交流、交際、探索、コンテンツ作成をするようになり、ブロックチェーン技術や暗号資産(仮想通貨)を使った仮想的な取引でマネタイズするかもしれない。メタバース(またはウェブ3)は本質的なところでNFTや暗号資産とつながっており、デジタルなアーチファクト(アートから作り出されたもの)を制作・販売することで交流をビジネスにしていくだろう。ウェブ3は今年、商業界で大きな話題になるとみられており、ナイキアディダスグッチ、プラダ、プーママイクロソフトといった主要ブランドが後押しするだろう。

◆暗号資産とNFTの成長加速
 NFTの利用拡大は昨年と同様に、今年も続くだろう。グローバルなオンライン経済における新しい価値交換メカニズムともいえるNFTにより、あらゆるデジタル資産やアート作品の価値と機能に変化がもたらされた。

 一時的な流行現象から新しい経済にいたるまで、NFTはハーバード・ビジネス・レビュー誌が言う「Digital Deeds(デジタル行為)」を作り出した。デジタルの世界においてほかの資産と同様に売買することができる、ユニークな資産といえる。トークン化とは、漏洩されると無意味な値となるトークンと呼ばれるランダムな文字列に、アカウント番号などの重要なデータを変換するプロセスである。デジタルトークンを使えば、絵画など実体のあるモノや、デジタルアート、アプリ内課金、さらには仮想的な不動産といった仮想資産を購入できる。

 フランクフルト・スクール・ブロックチェンセンターでは、ヨーロッパのトークン資産市場が3年後に1.5兆ドル(約171兆円)規模になると予測している。トークン化される可能性のある資産には、不動産、負債、債券、株式、著作権、リアルなアート作品、仮想的なアート作品、収集品などがある。

 こうした動きは、暗号資産が掲げる金融包摂の実現に向けた大きな一歩であることは間違いない。オルタナティブ資産や伝統的な資産に投資するのは困難であったり、多額の費用がかかったりする。クラウドファンディングとフィンテック(自動化された金融サービスの提供を可能にする金融テクノロジー)により、あらゆる規模の投資家が多様な資産に投資できるようになるだろう。

◆食品と人材サービスにおけるAIの成長
 人工知能(AI)を活用することにより、食品の概念化、生産、摂取のほか、職探しの方法が変わるかもしれない。ソニーでAIチームを率いるミカエル・シュプランガーCOO(最高執行責任者)は、労働力不足を契機として多くの組織がAIを活用するようになり、求職者の評価・査定方法の幅が広がったと話している。また、AIをもっとも顕著な方法で調理法に応用することにより、シェフや料理専門家の想像力や創造性が現在の能力以上に高められることもあると述べている。実際フリッピーのようなロボットは、すでにマクドナルドなどのレストランでハンバーガーの肉を焼いたりしている。

◆接続性の向上=さらなるDXの推進
 5Gと新たなWi-Fi6規格の導入によって、高速での接続が可能となる。ここで紹介している新しいデジタルトレンドを取り込もうとする世界にとって、不可欠のものだ。中国のハイテク企業、レノボの製品管理担当副社長ジェリー・パラダイス氏は「未来のアプリケーションはスマートシティ、IoT(モノのインターネット)、車両間の通信も対象となり、交通の流れや安全性の向上につながることが期待される」と述べており、5GとWi-Fi 6の意義は速度だけにとどまらない

 レノボでは、消費者や企業がオフィス以外の場所にも目を向けるようになることで、在宅勤務がますますハイブリッド化するとみている。多くのIT企業幹部は今後もスマートな小型デバイスやノイズキャンセリング機能付きのコードレスヘッドフォンを使い、オフィス外で仕事をするとみている。ハイブリッドな社員は自宅以外のどこからでもビデオ会議に参加したり、通話したりするようになるだろう。

◆新たな職場、新たなスキル
 職場の変化の次に来るのはスキルの変化だろう。世界経済フォーラムによると、今年は大企業で新しい職種に従事する社員の割合が27%を占める一方で、技術的に古い職種の割合は31%から21%に減少するという。

 人間、コンピュータ、アルゴリズム間での分業の進展により、現在ある7500万の雇用が失われる一方、1億3300万の新規雇用が創出される可能性がある。データアナリスト、ソフトウェアやアプリケーションのデベロッパー、EコマースやSNSのスペシャリストに対する需要が高まるだろう。

 顧客サービス、事業開発、イノベーションマネジメントなど数ある「人間的」な仕事も拡大するとみられる。つまり、AIは「我々の仕事を奪う」のではなく、さまざまな分野で仕事を生み出し、雇用確保につながるだろう。

This article was originally published on The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
Translated by Conyac

The Conversation

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Text by The Conversation