毒物か? オーデル川で謎の魚大量死 汚染広範囲、生態系破壊の危機

オーデル川の魚の死骸(8月12日)|Patrick Pleul / dpa via AP

◆遅れた対応 外交問題に発展か?
 この汚染に関し、ポーランド政府は科学者や環境保護主義者、野党などから対応が遅すぎると広く批判されている。ポーランド南西部にある町、オワバの漁師が魚の死骸に気づいた7月下旬以降、市長や野党「緑の党」議員などが警告を発してきたが、政府が対応したのは2週間以上経過してからだった。(ユーロニュース)

 ドイツ当局もポーランドの対応を快く思っていない。ドイツ側は8月9日に川船の船長から初めて情報を取得。ポーランド側が正式にこの危機について知らせたのは、すでにドイツの川岸に数トンの魚の死骸が打ち上げられていた8月11日になってからだったという。ブランデンブルグ州の環境相は、両国のコミュニケーションの繋がりはこの件では機能しなかったと苦言を呈している(ブルームバーグ)。

 ドイツ当局は毒物による汚染の情報を共有しないのは国際法違反だと非難したが、ポーランドの憲法裁判所判事からは、ドイツ人が川に毒を入れたことをほのめかす発言も飛び出した。両国の高官がその後会談し共同解決を協議したが、緊張は依然として高いままだ。(ユーロニュース)

◆広範囲を汚染 生態系への影響深刻
 ブルームバーグによれば、ポーランドでは8月2週目の週末には80トン以上の死んだ魚を川から回収し、遊泳とボートの使用を禁止したという。しかし汚染は数百キロに波及しており、問題は巨大だと地元ラジオ局は報じている(ロイター)。

 チェコを起点としポーランドを流れ、ドイツとの国境を通ってバルト海に注ぐオーデル川には40種以上の魚が生息している。しかし漁業は少なくとも10月までは禁止されており、漁師たちは春まで働けるかどうかを疑っているという。すでに地元の漁業や観光業の従事者は、解雇の危機に直面している。(ユーロニュース)

 今回の汚染は、オーデル川の生態系全体に大打撃を与えかねないと懸念されている。川の近くには国立公園など自然保護区もあり、水質汚染による自然の消滅が危惧されている。また、魚を餌とする絶滅危惧種の鳥類がいるため、毒物が食物連鎖に入り込む可能性があるという。ドイツのウッカーマルク郡の行政官は、生息する動物への影響を観察する必要があると指摘し、汚染は長期にわたって残る大惨事だと述べている(ガーディアン紙)。

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Text by 山川 真智子