途上国に汚れたプラごみを不正輸出…利益上げるリサイクル業者、犯罪組織ら

マレーシア・クアラルンプールのごみ埋立地(2019年4月)|Farrel Arissa / Shutterstock.com

◆途上国の汚染深刻、先進国の犠牲に
 廃棄物管理の専門家のための雑誌「Waste Management World」によれば、欧州ではトルコに続きルーマニアが違法に輸出された有害なごみや廃棄物の終着点になっているという。ベルギー、イタリア、イギリスといった欧州諸国以外にも、日本や中国からのごみが黒海の港町コンスタンツァに向かっており、中国の資源ごみ受け入れ禁止の影響を受けたものと思われる。ルーマニアではごみはほぼリサイクルされず埋め立てられ環境を破壊している。

 ブルガリアには、イタリアから大量のごみが持ち込まれているという。杜撰な規制と腐敗した政治家を利用し、豊かで貪欲な起業家、そしてマフィアなどが、ごみ輸出と受け入れを食い物にし、大金を稼いでいる。ごみ廃棄の費用はイタリアに比べ東欧では格安で、廃棄物を扱う商人にとってブルガリアは天国といわれているという。(デジタルニュース誌『ワールドクランチ』)

 ごみの不法輸出はアフリカのセネガルにも及んでいる。ドイツ企業が25トンの廃プラを密輸しようとし、セネガルの税関で取り押さえられた。セネガルは使い捨てプラスチック袋の利用禁止などを法律で定めているが、廃棄物汚染に悩まされているという。環境保護団体グリーンピースのアフリカ海洋キャンペーンの責任者は、先進国はプラスチック容器が持続可能なリサイクル資源だと世界に信じさせているが、それがアフリカの海岸に押し寄せているとし、アフリカはごみ捨て場ではないと訴えている。(アフリカの環境関連情報サイト『Afrik21』)

◆見えなくなればそれでよし 不正は今後も続くのか?
 前出の報告書の主執筆者、バージニア・コモリ氏は、人々のプラスチック依存は今後も続くと思われ、不正輸出のような犯罪行為も増加すると見ている。報告書がとくに問題視するのは、米カリフォルニア州だ。同州の廃プラスチックは、アメリカの発展途上国向けの輸出量の約3分の1を占め、マレーシアへの輸出禁止プラスチックの主な発生源となっている。同州にはリサイクル工場がほとんどないこと、またロサンゼルス港にアジアからの貨物が集まるが、帰りのコンテナに廃プラを詰め比較的安価で送り返すことができることなどが理由だという。(LAT)

 実はアメリカはバーゼル条約に加入しておらず、低品質のプラスチック廃棄物の出荷に関する2019年の協定を批准していない。そのため米企業はこれらの廃棄物受け入れが違法となっている東南アジア諸国に、廃棄物を送り続けている。そもそも欧米では廃棄物を埋め立て地やリサイクル工場に送るより、業者にお金を払って引き取ってもらうほうがずっと安上がりだった。環境保護団体の代表は、カリフォルニア州は埋め立てへの依存を減らそうとリサイクルを奨励してきたが、具体的な方法をまったく示さず各都市に丸投げしてしまったのも問題だったと指摘している。(LAT)

 同州の議員や環境保護団体は、バイデン政権にバーゼル条約の批准を求めている。しかし実現するまで、廃プラを途上国に出荷しない責任は都市やリサイクル会社の自主性にかかっており、ごみ問題解決の難しさを物語っている。

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Text by 山川 真智子