ロシア工作員と接点も ロシアのウクライナ侵攻を擁護する元米下院議員

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 ギャバード氏はその後訴えを取り下げたが、ロシアによるウクライナ侵攻後にツイッターで「この戦争と苦しみは、バイデン政権と北大西洋条約機構(NATO)が、ウクライナがNATOに加盟したらNATOがロシア国境に接することになるという懸念を認めていれば起こらなかった」とロシアを擁護する発言をした。しかもCNNによると、ガバード氏はその後も、ほかに民主党員の参加者がいない保守派政治活動協議会で発言したり、FOXニュースの保守派の司会者タッカー・カールソンのテレビ番組にゲスト出演したりと奇行が目立った。

 またニューズウィークによると、ギャバード氏はウクライナに「アメリカが資金を拠出した生物化学研究所が25〜30ヶ所ある」と証拠もなくロシア政府のプロパガンダを主張。共和党のミット・ロムニー上院議員にツイッターで「トゥルシー・ギャバードはロシアのプロパガンダをオウムのように繰り返している。彼女の反逆的な嘘で、人々の命が危険にさらされるかもしれない」と名指しで攻撃された。ニューズウィークの記事によると、クリントン氏やロムニー氏をはじめ、いまのガバード氏を「ロシアの手先」とみる人々は多く存在する。

◆ロシア工作員との接点が明らかに
 そのようななかで3月上旬、アメリカとロシアの二重国籍を持つ女性エレナ・ブランソン容疑者がロシア工作員としてロシア政府の指示を受け、過去10年近くもアメリカ政府に違法に親ロシアの政策を推奨してきたとして起訴された。そして米情報サイト『デイリービースト』によると、この工作員がただ一人だけ政治献金したのがトゥルシー・ギャバード元下院議員だったという。

 そしてこのロシア工作員にはギャバード氏のほかに、ハワイ州ともう一つの別の繋がりがあったことが判明した。ハワイの地元情報サイト『ホノルル・シビル・ビート』によると、ブランソン容疑者は、ハワイ州カウアイ島にある旧跡で、同島を訪れたロシア人が短期間占拠を試みたという言い伝えがある「ロシアン・フォート・エリザベス」を、ハワイの歴史に沿ってハワイ語に改名しようという地元の動きを阻止するための政治工作を行っていた。2017年にはロシア政府関係者を招待し、同旧跡の200周年記念イベントを開催したり、その後カウアイ郡やハワイ州の議員、歴史研究者などをロシアに招待したりした。同サイトによると、ブランソン容疑者はその後、連邦捜査局(FBI)に家宅捜索を受けた後にアメリカから逃亡し、いまも逮捕されていない。

 ギャバード元下院議員はすでに議員を引退しているが、いまも右派メディアに登場してはロシア擁護のコメントをしている。今後ガバード氏とブランソン容疑者のつながりがさらに明確になれば、なぜ彼女がロシア擁護の言動をし始めたのか、ロシアとどういう繋がりがあるのかの謎が解けるかもしれない。

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Text by 川島 実佳