「メルケルがプーチンを強くした」ウクライナ侵攻で前独首相を批判する声

Press Service of the President of Russia / Wikimedia Commons

 ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、ドイツのショルツ首相は軍事費の大幅増やロシアのガス依存からの脱却など、政策の劇的なUターンを宣言した。これに伴い、前任者でドイツの経済的発展を指揮したメルケル前首相の手腕を再考する動きが出てきている。

◆外交努力は無駄だった 軍事力軽視に批判
 メルケル氏がロシアは信頼できないという専門家の警告を無視したとして、同氏を批判する声が大きくなっている。ドイツは2008年、ジョージアのNATO加盟をフランスとともに阻止したが、その4ヶ月後にロシアがジョージアに侵攻した。アメリカがロシアのクリミア併合でウクライナを武装させようとした際にも、やはりメルケル氏と当時のオランド仏首相が反対し外交努力を続けた。その間にロシアの軍事的脅威は着々と増してきたと、元独連邦軍将校ローデリヒ・キーゼヴェッター氏が批判している。(ガーディアン紙

 メルケル政権下のドイツの防衛力は、長年にわたる過少投資で鈍化しており、アメリカや同盟国からも防衛費増額が求められていた。メルケル氏の最側近の一人で元国防相のアネグレット・クランプ・カレンバウアー氏は、「ジョージア、クリミア、ドンバスの後、我々はプーチンを抑止できるものを何も用意してこなかった」とし、軍事力を強化しなかったのは「歴史的失敗」と非難している(AFP)。

Text by 山川 真智子