あなたが知らない「定年後の危険」 定年前からの“準備”がカギに

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 「定年後はようやく自由な時間が持てる」。多くの人がそんなふうに考えているかもしれない。長年働き続けた日々から解放され、これからは自分のペースで生きていける。確かにそれは間違いではない。だが、その裏側には、意外と知られていない「危険」が潜んでいる。老後に忍び寄る見落とされがちなリスクとは。

◆孤独死は他人事ではない
 孤独死という言葉はどこか他人事のように響くかもしれないが、現実はそうではない。総務省の統計によれば、65歳以上の単身世帯は年々増加しており、2050年には全体の44.3%が一人暮らしになると予測されている。しかも、一人で暮らすこと自体が問題ではない。問題は「つながりの希薄さ」だ。

 定年を迎えた途端、職場という社会的なつながりを失い、日常的に話す相手がいなくなる人が少なくない。家族がいても子供は独立し、配偶者との会話も年々減っていくケースは多い。「今日は誰とも話していない」という日が積み重なれば、やがてそれは心身に影響を及ぼす。軽度のうつ、認知機能の低下、そして最悪の場合は孤独死につながる。

 人とのつながりは、収入や健康よりも老後の幸福度に直結するという研究もある。「退職後は自由な時間があるから、友人と会える」と思っていても、実際には行動力が落ち、腰が重くなっていく。意識して人との接点を作らなければ、あっという間に孤立してしまうのだ。

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Text by 切川鶴次郎