アフリカの偽造薬問題 ガンビアの子供28人死亡、薬が原因の可能性も

Agarianna76 / Shutterstock.com

◆アフリカに根を張る偽造医薬品問題
 ガンビア政府の判断の背景には、アフリカ大陸、とくに西アフリカにはびこる偽造薬問題がある。実際、今回のガンビアの子供たちの死は、ナイジェリアで2009年に起きた事件を思い起こさせる。歯が生え始めた子供用に作られたアセトアミノフェン・シロップ「マイピキン」を服用した幼い子供84人が亡くなったというものだ。この「マイピキン」シロップには、ブレーキ液や不凍液に使用される成分ジエチレングリコールが入っていた。(BBC、2020/7/15)

 世界保健機関(WHO)によれば、偽造医薬品は最も収益の高い偽造品で世界市場は約2000億ドルに上るが、その42%を占めるのがアフリカでの取引だ。国連薬物犯罪事務所(UNODC)によれば、販売されている医薬品の3分の1が偽物という地域もアフリカには存在し、WHOは、アフリカの偽造薬の犠牲者は、年間数十万人と推定している。処方箋も要らず安価であることから、消費者はその危険性を認識しないまま偽造医薬品を購入し、服用により悪くすれば死亡、そこまでいかなくとも胃や腎臓の問題、神経障害を被る例が後を絶たない。

◆国レベルでの対策もいまだ効果なし
 アフリカが偽造薬の舞台となる一番の理由は、国境監視が不十分であり、法律が脆弱であり、医療サービスが貧弱であることだ。この問題に対処するため、国や都市、製薬会社はさまざまな対策を取ってきている。たとえば、ガボンを含むアフリカの16の国は、偽造医薬品問題に対処するため、2018年にラバト決議を採択し、一般市民の意識向上キャンペーンなども開始した。(ISSトゥディ、3/15)

 またフランスの医薬品企業サノフィも偽造医薬品対処に特化した戦略を展開している(rfi、1/14)

 だが、今回のガンビア政府の判断からうかがえるのは、これらの対策にもかかわらず事態がいまだ好転していない現実だ。

 実際、ナイジェリアの偽造医薬品販売ネットワークは相当強固で、検挙しても起訴に至るのは難しいとBBCは報じている。薬剤師から買った偽造薬の服用で生死の境をさまよい、その経験から薬のクオリティ判断を提供する会社を立ち上げたナイジェリアのアロング氏は、殺害の脅迫まで受けたという(BBC)。アフリカにおける「安全な薬」へのアクセスはいまだ遠く困難な道のりだ。

【関連記事】
「パリ協定に適合」はガンビアのみ 西アフリカの小国の気候変動対策とは
「グリーン植民地主義」脱炭素を途上国に押し付ける先進国のエゴ
富裕国のワクチン独占「ワクチン・ナショナリズム」にどう対峙するか

Text by 冠ゆき